コラム

 公開日: 2013-12-06 

私的整理による事業再生

事業の経営が思わしくない場合,金融機関から追加融資を断られた場合,資金繰りがうまくいかなくなった場合などに,事業の再建・再生を図るためにはどのような方法があるのでしょうか。

大きく分けて,①民事再生法や会社更生法を利用し,裁判所が関与する法的手続と,②裁判所が関与しない私的整理とがあります。

ここでは,私的整理による事業再生について,概要を説明します。

私的整理にもいくつかの種類があります。主なものは以下の通りです。

1 私的整理ガイドライン

全国銀行協会や経団連等が策定し,平成13年9月に公表したものです。

債務者とメインバンクが再生計画を共同提案します。

これについては,メインバンク主導の再生計画に対し,他の債権者が納得できない場合も少なくないといわれています。

また,他の債権者からメインバンクに対し,応分以上の負担を要求されることがあります。これをメイン寄せといいます。

このような事情から,あまり活用されていないのが実情です。

2 事業再生ADR

特定認証ADRと呼ばれる民間事業者が行う手続です。

特定認証ADRが選任した事業再生の専門家が手続を実施します。

中立の専門家が関与するため公平であること,つなぎ融資(プレDIPファイナンス)を受けやすいこと,特定調停や法的整理に移行する場合にも裁判所がADRの調整を引き継ぐことなど,メリットがあります。

もっとも,地域の中小企業にとっては,以下の点でハードルが高いと考えられます。

①個人事業者は,利用できません。
②経営が窮境に瀕した企業,資金繰りに瀕し,対応に急を要する企業は,利用できません。
③3年以内に経常黒字に転換でき,かつ,3年以内に実質債務超過が解消できることが原則となります。
④審査料,業務委託金,業務委託中間金,報酬金の4段階で費用が発生します。審査の申請を行うときの審査料が50万円(税別)とされています。

このような事情もあってか,事業再生ADRは,現在,比較的規模の大きい企業に利用されています。

3 地域経済活性化支援機構

産業再生機構の地域版として2009年に発足しました。

機構自らが債権を買い取ることができるため,債権者間で意見が整わない場合でも事業再生が可能になる点がメリットです。

ただし,地域経済活性化支援機構の支援を受けるには,以下の基準をみたす必要があります。詳しくは,機構のWEBサイトをご覧下さい。

① 有用な経営資源を有していること
② 過大な債務を負っていること
③ 例えば,主要債権者との連名による申込みであること等,申込みに当たり事業再生の見込みがあると認められること
④ 再生支援決定から5年以内に「生産性向上基準」及び「財務健全化基準」を満たすこと
⑤ 機構が債権買取り,資金の貸付け,債務の保証又は出資を行う場合,支援決定から5年以内に申込事業者に係る債権又は株式等の処分が可能となる蓋然性が高いと見込まれること
⑥ 機構が出資を行う場合,必要不可欠性,出資比率に応じたガバナンスの発揮,スポンサー等の協調投資等の見込み,回収の見込み等を満たすこと
⑦ 労働組合等と話し合いを行うこと

このような要件があることからすると,地域の中小企業が利用しやすいかどうかはよく分かりません。

4 中小企業再生支援協議会

産活法(産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法)に基づいて平成15年に設置されました。

兵庫県の場合は,神戸商工会議所に兵庫県中小企業再生支援協議会が設置されています。http://www.kobe-cci.or.jp/service/soudan/hyotyuusyousaisei/

中小機構(独立行政法人中小企業基盤整備機構)の資料によると,次のような企業の利用をイメージしているようです。

① 経営者が再生に向けての強い意志と自信を持っている
② 現状,借入金の返済に苦しんでいるが,営業段階での利益は計上している
③ メイン銀行より再生計画策定を要請されている,または計画を提出したが納得されていない
④ 借入金の返済猶予を申し入れているが,了解を得られていない
⑤取引金融機関が複数あり,メイン銀行以外の支援が得られていない
⑥一部の金融機関がRCCに債権譲渡してしまった

中小企業再生支援協議会による支援は,一次対応と二次対応に分かれます。

一次対応は,無料の窓口相談です。

一次対応の結果,要件をみたす中小企業者について,二次対応として再生計画の策定支援を実施します。

再生計画策定支援を受けることのできる要件は,以下の通りです。

① 過剰債務,過剰設備等により財務内容の悪化,生産性の低下等が生じ,経営に支障が生じている,もしくは生じる懸念がある
② 事業に収益性や将来性があるなど事業価値があり,関係者の支援により再生の可能性がある

返済条件の緩和(リスケジュール),劣後ローンへの変更(DDS=資本性借入金)による再生支援の場合には,上記①②の要件でたります。

しかし,債務の株式化(DES),債権放棄,第二会社方式による実質的債権放棄を伴う再生支援の場合は,以下の要件が加わります。

③ 過剰債務を主因として経営困難な状況に陥っており,自力による再生が困難である
④ 法的整理を申し立てることにより相談企業の信用力が低下し,事業価値が著しく毀損するなど,再生に支障が生じるおそれがある
⑤ 法的整理の手続によるよりも多い回収を得られる見込みがあるなど,債権者にとっても経済的合理性がある

5項目の要件がありますが,どれも厳しいものではありません。

地域の中小企業の事業再生にはもっとも向いていると思います。

この記事を書いたプロ

西脇法律事務所 [ホームページ]

弁護士 矢野耕司

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