コラム

 公開日: 2013-07-05 

自転車事故の損害賠償

子どもの自転車事故について,被害者・加害者両方の立場から考えてみましょう。

「小学生が乗った自転車にはねられて植物状態になったとして、被害女性(67)の家族と保険会社が児童の母親(40)に対し、計約1億600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、神戸地裁の田中智子裁判官は4日、児童の母親に計約9500万円を支払うよう命じた。」という報道がありました(神戸新聞NEXT http://www.kobe-np.co.jp/

子どもに責任能力のない場合には,子ども自身が損害賠償責任を負うことはありません。

その代わり,その子どもを監督すべき法律上の義務を負う者が,損害賠償責任を負います。

普通は親権者が監督義務者として損害賠償責任を負うことになります。

ただし,監督義務者が,監督義務を怠らなかったこと,または,監督義務を怠らなくても損害が生ずべきであったことを立証した場合には,責任を負いません。

ここでいう責任能力は「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」とされ,個別具体的に判断されますが,過去の裁判上,概ね12歳前後を基準とするケースが多いようです。

とすると,12歳以上の子どもだと,責任能力の認められる場合があることになります。

その場合には,子ども自身に民法709条の損害賠償責任が認められます。

しかし,被害者の立場に立ってみると,子どもを相手に裁判をする気にはなりません。

また,子どもには,損害を賠償するだけの資力がないことがほとんどでしょうから,子どもを被告として勝訴判決をもらっても,あまり意味がありません。

そこで,被害者は,子どもに責任能力がある場合でも,親の監督義務違反を立証すれば,親に対して損害賠償請求をすることが出来ます。

結局,責任能力の有無は,監督義務違反の立証をどちらが行うべきか,という違いに行き着くことになります。

子どもに責任能力のない場合には,親が監督義務違反のないことを立証しなければならず,子どもに責任能力のある場合には,被害者が監督義務違反のあることを立証しないといけないということです。

ここで注意しておくべきことがあります。

子どもに責任能力のある場合,被害者が監督義務違反のあることを立証しないといけないのですが,裁判実務上,親の監督義務違反は,かなり広く認められる傾向にあると感じます。

ですから,もしも,子どもが自転車事故を起こし,被害者が怪我をしてしまったような場合,親が損害賠償義務を負わずにすむ可能性は,実際のところ,かなり低いと考えておいた方がよいでしょう。

最近は,自転車事故に適用される損害保険もあるようですので,お子様が自転車を運転するご家庭は,自転車事故をカバーする保険に加入しておくことも自衛策として検討されてはいかがでしょうか。

他方,被害者は,加害者が子どもだから,未成年だからといって,正当な損害賠償請求を躊躇する必要はありません。

後日の紛争を予防するためにも,自動車の交通事故同様,きちんと警察に連絡し,現場に来てもらい,事故証明書を作ってもらいましょう。

人身事故であれば,人身事故であるとの届けをし,実況見分を行う場合には,自分の記憶する事故状況をきちんと警察官に話し,自分の記憶にあった事故状況が実況見分調書に記載されるように気をつけましょう。

以前,私があつかった自転車事故では,このようなことがありました。

被害者の女性は,加害者が少年であり,厳しい処分を受けてはかわいそうだと思い,人身事故扱いにはしませんでした。

被害者の女性はその後,重たい頭痛などにひどく悩まされることになり,損害賠償請求を西脇法律事務所に依頼されました。

損害賠償請求の訴訟において,加害者は事故状況を真っ向から争い,あろうことか,歩行者であった被害者女性に落ち度があると主張したのです。

しかし,先ほど述べたとおり,そのケースでは人身事故扱いにしていなかったため,警察による実況見分が行われませんでした。

事故状況の有力な証拠となりうる実況見分調書がないということです。

幸いにも,そのケースでは,被害者にご納得いただける和解が成立しましたが,そうでなければどうなっていたか。加害者の対応には今でも強い憤りを感じます。

そのようなことにならないよう,自転車事故であってもきちんと警察に連絡し,身体の不調を感じるときは躊躇なく人身事故扱いにしましょう。

交通事故の法律相談は,西脇法律事務所まで

http://nishiwaki-law.com/koutsuujiko.html#koutsuujiko

この記事を書いたプロ

西脇法律事務所 [ホームページ]

弁護士 矢野耕司

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