コラム

 公開日: 2012-08-24  最終更新日: 2012-10-17

為替デリバティブの説明義務

中小企業の円高倒産が急増しているそうです。輸出企業は円高により価格競争力が落ちたこと,輸入企業は円安を見込んで金融機関と結んだ為替デリバティブ取引の損失が響いたのがその理由として指摘されています。

為替デリバティブを販売する場合,金融機関はどこまでの説明義務を負うのでしょうか。

円安になると得をするが,円高になると損をするリスクがありますよ,中途解約は清算金がかかりますよ,それだけ説明すればよいのでしょうか。

前回お話ししたとおり,顧客企業が長期の為替デリバティブ契約を締結すると,金融機関はひと契約あたり数千万円の利益を得る場合があります。

その数千万円は,どこから出てくるのでしょうか。

これも前回お話ししたとおり,顧客企業が受け渡しの度に支払う金額とフォワードレートにより計算した金額との差額であり,まさにこの差額は,顧客企業が負担しているのです。

もちろん,金融機関もビジネスですからどこかで利益を得る必要があります。

しかし,円安リスクを回避するための商品=顧客企業のリスクヘッジに役立つ商品というのであれば,顧客企業に対してもフォワードレートの理屈を説明し,固定レートではなく,フォワードレートに基づいて為替予約を締結すればよいのです。

そして,金融機関は各受渡日に手数料をもらえばよいのです。

そのようにしないで,あえて固定レートで長期の為替予約を締結させる意図はとこにあるのでしょうか。

顧客企業が為替デリバティブに詳しくないことをよいことに,受け渡しごとの手数料だけではあきたらず,莫大な利益を追求するためとしか思えません。

莫大な利益を追求することが悪いとはいいません。しかし,顧客企業に莫大な損失を被らせることによって金融機関が莫大な利益を求めるというのは,いかがなものでしょうか。

しかも,顧客企業には「リスク回避に有効な商品」と説明しているのです。顧客企業のリスクを回避しますといいながら,実は莫大な損失を負わせ,自らは莫大な利益を求めているのです。

このような実態を知っていれば,顧客企業は契約を締結したはずがありません。

前回お話ししましたが,私が実際に担当したケースでは,為替予約を締結した時点で3000万円の損失が生じていたものがありました。

もちろん,予約締結時に設定した固定レートよりも円安が続けば,各受渡日において,利益が発生します。しかし,10年間のトータルで3000万円以上の利益が出ない限り,顧客企業は得をしないわけです。

すなわち,円高になるか円安になるかはただでさえ予測困難であるにも関わらず,顧客企業は,3000万円のマイナスからスタートすることを余儀なくされるのです。

円安によって10年間に3000万円以上の利益が出ない限りトータルで得をしない取引,もし円高になった場合には得をするどころかさらに損失がふくらむという取引をあえて行おうとおう企業があるでしょうか。

あるはずがないと思います。

このように,長期の為替予約において,フォワードレートの理屈や金融機関の利益構造というのは,本来,顧客企業にとって,契約締結するかどうかの大きな判断材料となる事項です。

そのような重大な判断材料について,説明義務を負わないというのはありえない話だと思いますが,いかがでしょうか。

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