コラム

 公開日: 2018-02-18 

掛軸の身近なお話①

玉木覚です。

今日から数回に分けて、掛軸の身近なお話を紹介していきます。今回の連載記事は「掛軸を取り扱う上でこうしたほうが掛軸に優しいですよ。」、といった身近な内容を中心に書いていきます。実用的なお話になりますので、良かったら参考にしてみてくださいね。

では、一回目の今日は掛軸の損傷と掛軸の巻き方(仕舞い方)について紹介します。

掛軸を損傷する原因は、保存環境だけではなく、掛軸を広げたり仕舞ったりする(巻く動作)ときの取り扱い方に多く潜んでいます。

掛軸の傷みのうち、表具地の傷みは表具地を取り替えれば(仕立て直しですね)解決できますが、作品に生じた傷みを元に戻すことは困難な場合があります。例えば掛軸の作品を損傷した場合について考えてみましょう。損傷の程度が軽い折れでしたら仕立て直しをしなくても直る場合がありますが、強い折れが生じた場合は仕立て直しをしないと直らないことが多いです(場合によっては元に戻らないこともあります)。また、折れた部分の顔料(墨など)が剥がれ落ちてしまった場合には、元の状態に戻すことが困難になります。

要するに、掛軸には極力折れが生じないように取り扱うことが望ましくなります。(破れは折れよりもひどい損傷になりますので、折れ以上に破らないようにも注意してくださいね。)

また、掛軸は長期間にわたって掛けっぱなすと作品を含めた掛軸全体が硬化してしまって、巻いて収納するときに横方向のシワや折れ(横折れ)が生じることがあります。この横折れは硬化した掛軸を巻き仕舞うときに生じるものですので、この横折れを防ぐためには掛軸を硬化させないようにする必要があります(厚くて硬い紙を無理やり巻こうとしたときのシワや折れを想像してみてください。)。一般的には、掛軸はだいたい一ヶ月間掛けっぱなしにすると硬化が始まるといわれていますので、掛けっぱなしにせずこの期間内に時々巻き収めると硬化を防ぐことができると言われています。

あと、掛軸を巻き仕舞うときには固く巻かないで緩めに巻くほうが良いとされています。これは、掛軸を巻き収めるときに余計な力をかけてシワや折れが生じることを防ぐためです。

そこで、シワや折れ(横折れを含む)や掛軸の汚損などを防ぐ巻き方が重要になってきます。

まずは、掛軸に優しくない巻き方を見てください。下の写真のように掛軸の真ん中を持って掛軸を巻き仕舞うことは、掛軸に余計な力がかかってしまうので、掛軸に優しい取り扱い方法とは言い難いです。また、この方法で掛軸を巻き仕舞うと手の汚れや湿気(汗など)が掛軸に移ってしまい、掛軸の劣化を早めることになりかねません。

この巻き方は掛軸に負担をかけてしまいます。←この巻き方は掛軸に負担をかけてしまいます。

前から見たらこんな感じです。←前から見たらこんな感じです。

次に、掛軸に負担をかけない巻き方を紹介します。普通、掛軸を巻き仕舞うときには、次の写真のように軸先を持ってクルクルと巻き仕舞います。

軸先を持って巻き仕舞います。←軸先を持って巻き仕舞います。

前から見たらこんな感じです。←前から見たらこんな感じです。

この方法ですと、直接手が掛軸の表具地に触れませんので、掛軸を損傷するリスクが軽減されます。(軸先は掛軸の見た目においても重要ですが、掛軸を巻くときの取っ手の役割も担っています。)

このように書くと「掛軸ってなんてナイーブで取り扱いの難しいヤツ」なんて思ってしまうかもしれませんが、そんなに難しく考えることはありません。

とりあえず、掛軸を仕舞うときは軸先を持って固く巻き締めないようにしてみてはいかがでしょうか。これだけで掛軸への負担が軽くなりますよ。

では、次回もお楽しみに~!

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