コラム

 公開日: 2018-02-14 

表具のお話 その2 <表具の目的って?>

玉木覚です。

前回の記事では、一般的には『表具』は次の<表具に含まれるもの>を指していることを紹介しました。

<表具に含まれるもの>

●掛軸、額装、襖、屏風、衝立、巻子、帖、障子張り、貼付壁、など。

*注:これには色々な解釈があるのですが、文献等で確認できるものの中で、一般的に「表具」と認識されているものを載せました。

そして、「表具師」は上述の<表具に含まれるもの>を設計したり作ったりしている者であることも紹介しました。

今日は、『表具』の目的について考えてみます。

なぜ作品を表具(掛軸や額装)に仕立てるのでしょうか。
例えば、今、目の前に紙(画仙紙)に書いた書道作品があるとしましょう。作品は裏打ちも何もしていない状態としてください。もし、このままタンスや押入れの中に仕舞いこんでしまうと、シワが入ったり折れ目が付いたり破れてしまうかもしれません。また、鑑賞しようと思って部屋に飾ろうとしても、紙の状態ではヒラヒラしますし見栄えもよくないです。

つまり、作品を長い間きれいな状態で保存したり、鑑賞するときに作品の見栄えを良くするのに、書いたままの状態で作品をおいておくことは作品のために良くなかったり鑑賞に不向きであるということです。そこで、表具が登場します。

例えば、作品を掛軸に仕立てる場合ですと、作品が裏打ちされることによって丈夫になります。掛軸を作る場合、通常、作品には合計で3回の裏打ちが施されます。裏打ちに使う紙は薄い和紙ですが、一枚一枚はそれなりに強度があります。また、裏打ちは3回行いますので3枚の和紙が作品の裏側に貼り付けられることにます。一方、掛軸を表から見てみると作品の周りには布がくっつけられて、作品の見栄えが良くなります。

今のは掛軸を例に挙げましたが、額装に仕立てる場合でも、屏風に仕立てる場合でも、帖に仕立てる場合でも、基本的なことは掛軸と同じです。つまり、作品は表具を施されることによって、長期間にわたって美しく保たれ、見栄えが良くなります。若干難しい表現になりますが、これらは「表具の目的は作品の保存と鑑賞に資すること。」ということになります。

大事な作品ってずっと長い間綺麗な状態を維持していたいですし、鑑賞するときには格好良くあってほしいというのが作品所有者の自然な気持ちだと思います。

次回は表具師の起源と仕事内容の変遷について紹介したいと思います。表具職が日本で出てきた当初は今とは別の仕事をやっていたようです。さて、どんな仕事だったのでしょうか。
次回をお楽しみに。

<おまけ>
表具をするときには、表具としてそのもの自体の調和が取れているか、室内環境と調和が取れているか、といったことに注意する必要があります。

掛軸を例に挙げますと、『表具としてそのもの自体の調和が取れているか』は掛軸に使っている布が作品に対して適当かどうか、または中廻の布が天地の布や一文字の布に対して不釣合いでないか、といったことです。例えば、侘び・さびをイメージさせる『草』仕立(茶掛)に荘厳・豪華をイメージさせる『真』仕立(仏表具)に使うような金襴を使うと、『草』仕立(茶掛)として調和が取れていませんよね(早い話が『草』仕立(茶掛)に豪華な金襴を中廻や天地に使うことはしませんよね。)。

また、『室内環境と調和が取れているか』は床(とこ)に掛からない掛軸になっていないか*1といったことや、掛軸を掛ける場所にあわせた雰囲気に仕上げるようにする*2、といったことです。

*1:床(とこ)の高さよりも掛軸の長さが長いと掛軸を掛けたときに掛軸の下側が床(ゆか)に接してしまうので、そうならないように注意が必要です。(掛軸を鑑賞するときは、床(ゆか)にダラリと掛軸が接している状態で鑑賞することはしないですよね。)

*2:特にデザイン表具の場合ですと、掛軸を床の間の『床』(掛軸を掛けるへっこんだ場所、写真参照**)以外、例えば洋室に掛けることを前提とするなら、その洋室の雰囲気(インテリア)のイメージに調和するような掛軸を設計することが必要になってきます。例えば、モダンならモダン、カジュアルならカジュアルに沿ったデザインを設計する、といったことです。

床 ←**『床』の例(掛軸が掛かっている空間が『床』です。)。

表具師 玉木楽山堂

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