コラム

 公開日: 2017-07-02 

人は「物語」によって、辛い「現実」を自分なりに受け入れるのだ・・・映画「怪物はささやく」

大変興味をもちながらも、いろいろ忙しくて時間が合わずに見に行けなかった映画「怪物はささやく」。ようやっと先日見に行くことができました。見終わった感想は「あぁ、もっと早く見ておけばよかった!」と言うぐらい胸に迫る映画でした。

予告編はこちら


母親の死を目の前にして、しかし本当のことを知らされない、あるいか感じていても口に出すことは決してできない少年コナー。実際コナーにとって母親の死という現実はとてもそのまま受け入れられるものではありませんでした。しかし受け入れられないからと言って現実は変わりません。こういう時、人はどうやって現実と関わることが出来るでしょう?

この問題はコナーに限らず、私たち自身の人生において誰も目を背けることができない問題です。家族や身近な人との別れは誰も逃れることはできません。いやもっと言えば人間である以上、私たち自身この世界から必ずお別れをしなければいけないのです。この世に生まれてきたことと同様、この世から姿を消さざるを得ないことは必定です。

しかし、「なぜこの私が、この世に生まれてこれたのか?」という問いと同様、「なぜこの私が、死ななければいけないのか?」「なぜあなたが死ななければいけないのか?」と言う問いかけも明確に答えられる人はいないでしょう。

なぜなら「人はどうやってこの世に生まれてくるのか?」と言う問いや「死ぬとはどういうことか?」という科学的で一般的な問いかけではなく、寄りにも拠って「なぜこの私が」「なぜあなたが」、そして寄りにも拠って「なぜ今?」「なぜここで?」という一回性で個別性の問いかけは科学が答えられる問題ではないからです。

それにこたえられるのが「物語」なのです。「物語」は科学的な思考のように客観的な説明を必要としません。それを読んだ人がそれぞれ自分なりの解釈と意味と奥行を産み出すことができる生命の源のようなものです。昔から人間は客観的に説明できない問題を神話やおとぎ話のような間接的な物語を通じて描写してきました。たとえば昨夕西の海に沈んだ太陽が再び東の海から昇るのを見て、太陽が夜の海の航海を遂げ、死と再生を果たしたのだ、世界というものはそうやって日々新しく生まれ変わるものなんだ、というように。

こういう物語を通じて私たち人間は、自分の力や理解の限界を超えた現象を受け入れてきたのです。この映画でもコナー少年は母親の死という現実や学校におけるいじめや理不尽な現実に対して、自分なりの物語を作り出すことで「逃れることができない現実と向き合うための物語」を産み出し、乗り越えていきました。

ネタバレになってもいけませんからこれ以上は実際に映画を見ることをお勧めします。でもいつまで公開しているかな??
あぁ、もっと早く見ておけばよかった (-_-;)

この記事を書いたプロ

カウンセリング・オフィス岸井 [ホームページ]

臨床心理士 岸井謙児

兵庫県神戸市中央区花隈町9-25 グランピア下山手通 002号室 [地図]
TEL:090-1243-9646

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

4

こちらの関連するコラムもお読みください。

<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
岸井 謙児(きしい けんじ)プロ

豊富な経験を生かし、相手に寄り添って希望を見出す手助けを(1/3)

JR・阪神元町駅、阪急花隈駅、神戸市営地下鉄県庁前駅からほど近い閑静な場所にある「カウンセリング・オフィス岸井」。カウンセラーの岸井謙児さんの元には、不登校、発達障害などの悩みを抱える思春期から青年期の子どもたちや親が多数訪れています。...

岸井謙児プロに相談してみよう!

神戸新聞社 マイベストプロ

子供から大人まで長い経験からさまざまな悩みに対応します。

事務所名 : カウンセリング・オフィス岸井
住所 : 兵庫県神戸市中央区花隈町9-25 グランピア下山手通 002号室 [地図]
TEL : 090-1243-9646

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

090-1243-9646

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

岸井謙児(きしいけんじ)

カウンセリング・オフィス岸井

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
プロのおすすめコラム
シンボリズムの森 ⑥ 「水ー2」
イメージ

しまった、厄介なものを取り上げてしまった、と思いつつ、「水」の第2回目。「水」なんて普遍的なものは、た...

[ シンボリズムの森 ]

シンボリズムの森 ⑤ 「水-1」
イメージ

シンボリズムの森、第5回目は「水」。「水」について書き始めて、思わず「しまった!」。なぜなら「水」なんて...

[ シンボリズムの森 ]

シンボリズムの森 ④ 「花」のシンボリズム
イメージ

さて今回取り上げるのは「花」皆さんは「花」と言えば何を思い出しますか?赤や黄色やピンクのきれいな花畑を思...

[ シンボリズムの森 ]

シンボリズムの森①  シンボルって何?

さて、今日は最初にシンボルについて話をしたいと思います。あなたは夜「夢」を見ませんか?「将来の夢」とか...

[ シンボリズムの森 ]

シンボリズムの森 ② 「木」のシンボリズムについて
イメージ

さて5月6月と言えば新緑が目にまぶしい季節ですね。私もGW以降、いろいろな花や新緑を見に行きました。気持ち...

[ シンボリズムの森 ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ