コラム

 公開日: 2016-05-29 

一人の青年の自立の歩みを追う秀作ドラマ「みなさん、さようなら」

今回取り上げた映画はこれ



小学校卒業以来、自分の住む団地から一歩も出ずに生活をする男性の20年の歩みを追うドラマです。映画の設定自体は、昔懐かしい昭和時代で、大阪万博や空手バカ一代の大山倍達さんが登場したり、同時代を生きた私としては大変懐かしい限り。

だいたい「団地」なんて言葉は、あの時代に生まれて最近では「ニュータウン」(これも古いか?)になってほとんど聞きませんね。「工業団地」なんていい方は聞きますが。その団地で20年を過ごす、というか本当に過ごせるのか?とも思いますが、昔は団地の中に色々な店やスーパーもどきの店が一緒にあったものです。

1981年、小学校を卒業した主人公の悟は、その団地の生活圏内で生きていくことを高らかに宣言します。今で言うところの「マイルドヤンキー」のプライベート版と言うところでしょうか。彼は中学にも行かずに独自の信念に従った生活を確立し、自分で立てた生活スケジュールに従って勉強も体力作りも着々とこなしていくのでした。

母親のヒーさんは、そんなマイペースな息子の姿を優しく見守っていたのですが、実はそれには理由があったのです。ここから先はメタバレになってしまうので、はっきりとは言えませんが、実は悟は小学校の時に、突然学校に侵入してきた不審者によってこころに大きな傷を負っていたのでした。彼はその時のトラウマから、団地の外へと通じる階段を降りようとしても、身体が動かなくなりパニックになってしまうのでした。

何度もチャレンジしてもどうしても動けなくなってしまう悟。母はその悟の苦しみを十分に理解したうえで、受け入れて見守っていたのです。

その後もさまざまな身近なエピソードの中に、現代を象徴するような問題点が現れてきます。ある意味では、この映画は悟一人の問題ではなく、日本と言う社会の病理そのものを映し出している映画であるとも言えますね。たださまざまな問題点を評論家のように声高に上から目線ではなく、あくまでも一人の青年の生き様とそれを取り巻く日常のエピソードで語ってくれています。

色々と考えさせられた映画でしたが、最後に悟は最愛の母親の死をきっかけとして立ち直り・・・・・・。前半の多少コメディ調の印象とは裏腹に、とても深い一人の若者の成長を描いた印象の残る映画だったと思います。でもこれは他人ごとではありませんよ、そう、あなたも私も、みんな、ガンバレ!!

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