コラム

 公開日: 2018-05-26 

「大人たちの都合」があぶない(3)

 日大アメフト部の元監督は、大学内でも絶大な権力を持っています。単なる体育会系クラブの一監督だったわけではありません。日大の理事は34人いますが、常務理事は5名だけです。その中でも人事担当として人事権を掌握する常務理事であることから、理事長に次ぐ日大経営部門のナンバー2といわれています。一般企業に例えるなら、副社長あるいは専務取締役といったポジションです。

 ご存知のとおり、日大は我が国でも最大規模の学校法人であり、教職員の数は7000人を超えています。これだけ大きな組織において、人事権を握る「常務理事」という立場にあるわけですから、大学側(の職員)が、元監督の「擁護」に走るのは当然のことです。日大広報部が加害選手の指摘を無視して、元監督を「擁護」するようなコメントを連発したことも、上司に対する「忖度」としては当然のことでしょう。まさに自分たちの「生殺与奪」の権限を握っている「常務理事」をないがしろには出来ないからです。昨日の日大学長の記者会見もピリっとしませんでしたが、事情は同じです。ここでも「大人たちの都合」が渦巻いているわけです。

 話は少し脱線しますが、私が過去に、ある自治体首長の収賄事件の弁護人を務めたときのエピソードです。当初、自治体職員の供述は首長を「擁護」する方向性のものばかりで占められていました。ところが、首長が逮捕されて「辞職」を余儀なくされると、途端に手のひらを返したように、元首長に不利な供述が職員からいっぱい出てきました。警察は、取り調べの過程で懸命かつ執拗に首長本人に対して「辞職」を迫っておりましたが、それはこのような「展開」を見据えてのことだったのです。組織というものは、トップが君臨している限りは懸命に擁護しようとするけれども、いったんトップがその地位を失ってしまうと、あとは冷たいものなんだなぁ…と痛感したことを覚えています。

 そんなわけで、元監督が日大の常務理事の地位にとどまる限り、日大は組織をあげて「擁護」する姿勢を崩せないことが予測されます。逆に言うと、元監督は自分の「地位」と「名誉」を守るために、意地でも常務理事を辞さないのではないかと思われます。この際、世間体なんぞはどうでも良いのです。元監督が常務理事の職にとどまる限り、日大関係者は元監督をなんとかして「擁護」ぜざるを得ません。ただ、日大関係者でも労組などからは疑問の声があがっていますし、学生の保護者で構成される「父母の会」なども動き始めています。当のクラブに所属する現役学生たちも「反撃の狼煙」を上げようとしています。それでも常務理事を「辞めたら終わり」です。大学関係者の多くは「とっとと辞めて欲しい」と思っているでしょうけれども。

 ところで、刑事事件においては、「すでに社会的制裁を十分に受けた」として情状弁護のポイントとするため、あえて重要な職を辞させることがあります。しかし、上記のとおり、本件では、これを行うメリットとデメリットを比較すると、現段階では、職を辞さない方が断然有利だと考えられます。少なくとも弁護人からは、「辞めては駄目!」と進言されるでしょう。組織をあげて(事実関係を多少捻じ曲げてでも)、「警察・検察」と闘ってもらわなければならないのですから。もうホントに「大人たちの都合」がはびこる嫌な世界なんですよぉ。

 最悪の場合は、元監督を刑事責任から逃れさせるために、元コーチが全部「罪をかぶる」という方向性で事件を決着させようとするでしょう。実際に具体的な「指示」をしたのが元コーチであって、元監督と加害選手との直接的な「接点」が少なかったことを「逆手」に取る方法です。組長の責任を回避する手段として「若頭」が黙って全部の「罪」を背負う…嗚呼、美しきかな「任侠」の世界!! まったく反社会勢力と同じ構図ですね。

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