コラム

 公開日: 2018-05-25 

「大人たちの都合」があぶない(2)

 今回の「日大アメフト事件」の本質的な問題点は何処にあるのでしょう。私は、スポーツ界に根強くはびこる「勝利至上主義」が重要なポイントの一つだと思います。「勝星」を上げることで、実際に競技する選手たちはもとより、所属チーム、指導者(監督・コーチ)、さらにはチームを擁する学校・企業等のステータスがアップします。もちろん、スポーツ競技において勝利を目指すことは当然のことであり、全力を尽くして闘うこともまた必要なことだと思います。

 しかし、何が何でも、また、どのような手段を使ってでも、絶対に「勝利」にこだわるという「姿勢」は如何なものでしょうか。「勝利至上主義」から派生するのが、行き過ぎた指導や長時間に及ぶ過酷な練習、そして暴力や体罰の横行…といった諸々の「弊害」であることを私たちは経験的に熟知しています。

 そして、このような「勝利至上主義」に凝り固まった指導者(監督・コーチ)たちは、結局のところ、競技者である選手たちのことを考え、選手たちを尊重するためではなく、みずからの「指導力」を誇示し、指導者としての自分を「高く売る」ために行動する…というのがお定まりです。もちろん、常に競技者である選手たちのことを考え、選手たちを尊重する立派な指導者もたくさんおられます。しかし、そのような指導者は、決して「勝利至上主義」に溺れたりしません。選手を育て上げ、人間として成長させることに重きを置く指導者にとっては、「勝星」のみにこだわる理由など何処にもないからです。

 さて、「日大アメフト部」で指導者の立場にあった方々は如何でしょうか。加害選手の会見内容に信憑性があると考えれば、本当に「最低の」指導者と言わねばなりません。勝利のためには相手チームの選手を潰す(負傷させる)ことも厭わない。加害選手を練習・試合のメンバーから外したり、全日本代表選手を辞退するよう迫るなどして、極度の「焦り」の感情を植え付け、「鉄砲玉」として相手チームに「殴り込み」をかける役割を「志願」させる。そのうえで、「やれなかった…では済まないぞ」とのダメ押し。私は、太平洋戦争の「特攻隊」の隊員のことに思いを馳せました。特攻隊員は全員が「志願」して敵の艦船等に突っ込んでいます。しかし、その「志願」の実態は決して「自由意思」に基づくものとは言えません。「志願しない=命が惜しい=非国民」という恐ろしい「屁理屈」が堂々とまかり通っていたのが、あのまがまがしい「時代」なのです。しかし、この平成の世の、平和な日本においても「特攻」に志願させる「地獄のようなクラブ」が存在したわけです。

 今回の「特攻」で、加害選手が命を失ったわけではありませんし、被害選手の命まで奪ったわけでもありません。しかし、被害選手の「選手生命」を奪う可能性は十分にありましたし、みずからの「選手生命」はもはや存在し得ない状況です。そのうえ、実名も顔もさらけだしての記者会見を行いました。自身の人生において将来予想され得る、たくさんのリスクを全部その身に受ける覚悟で実行したとしか思えません。まさに二度目の「特攻」です。

 現在のところ、日本大学は、加害選手に対してまったく指導や援助の手を差し伸べていません。もはや「見殺し」状態です。そして元監督・コーチの会見は、加害選手の「告白」とは内容的に大きく乖離するもので、事実関係が大きく捻じ曲げられているとしか感じられません。太平洋戦争で部下に「特攻」を命じた上官のうち、心ある人たちは終戦の前後にみずから命を絶っています。しかし、まるで何も無かったかのように「頬かむり」をして生き延びた人々も多いと聞きます。元監督・コーチは、学生である加害選手に二度の「特攻」を余儀なくさせておきながら、「大人たちの都合」により、このまま「頬かむり」をしようとしているのでしょう。あ~、情けない!!

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