コラム

 公開日: 2016-02-01 

「号泣元県議」騒動に見る司法の劇場化(3)

 裁判所は「号泣元県議」を2か月間勾留する旨の決定をしました。在宅起訴された被告人を第一回公判後にあらためて勾留するというのも、また「異例中の異例」の取扱いです。勾留理由は公表されていませんが、「逃亡のおそれ」がその理由だと思われます。この「逃亡のおそれ」というのは、実務上たいへん抽象的な概念であり、具体的な検討もないままかなり安易に認められてしまうのが実情です。

 前にも述べたとおり、被告人は警察での捜査段階では自白していたのに、書類送検後、検察官の取り調べ段階で「否認」に転じています。そのうえで第一回公判期日をドタキャンし、勾引状の執行を受けてようやく出廷した挙げ句、公訴事実を「否認」したわけです。

 ぶっちゃけた話、裁判所は「否認」する被告人のことは絶対「歓迎」しません。上方落語の「天狗裁き」でお奉行さんが「上(かみ)多用のみぎり手数をわずらわしたる段不届きの至り…」と町役らを叱る場面がありますが、「否認事件」は「自白事件」の何倍も手数がかかり、予定していた公判回数や開廷時間などに「狂い」が生じがちです。

 しかも、「自白事件」であれば、被告人の「有罪」を前提に、事実関係や情状を吟味して最終的な量刑をどうするか…の点に腐心すれば足りますが、「否認事件」となれば「有罪か」「無罪か」の難しい判断を避けて通れませんし、事実認定や法律解釈などの争点が「山盛り」になるので、時間だけでなく裁判官に降りかかるストレスも膨大になります。

 そこへ来て「号泣元県議」の被告人質問における答弁は、一問ごとにかなり時間を要し、長い沈黙の後に出てくる言葉が「記憶にありません」だったりするわけですから、裁判長が「さっさと答えて!」などと「いら立つ」のも無理からぬことだと思われます。

 裁判所の立場から見ると、実質審理を1回で終えようと踏んでいたのに、次回公判(2月22日)でもさらに被告人質問を続けたうえ、第3回公判で論告求刑と弁論、その後ようやく判決公判…と、あと3回も公判を開く必要に迫られました。それらの公判のたびに被告人の出頭確保に頭を悩ませ、何度も勾引状の発付や執行を繰り返すくらいなら、いっそのこと勾留した方が楽だ…というのが裁判所の「本音」だったのではないでしょうか。

 一般的に、裁判官や検察官は「犯罪者」に対する「身柄拘束」について、私たち弁護士よりはかなり「寛容的な感覚」です。本来であれば、判決が確定するまで被疑者・被告人は「犯罪者」として取り扱われるべきではありません(無罪推定の原則)。可能な限り身柄を拘束することを避けるべきは当然の要請です。しかし、現実には、裁判官にとって「否認」する被告人は「お荷物」ですし、「否認→罪を認めない→逃亡」という公式も頭の中にありますから、ますます「身柄拘束」の方向へとモーメントが動いてしまうのでしょう。

 ただ前にも述べましたが、被告人は何らかの「精神的疾患」を抱えていると思われます。それが足を引っ張るようにどんどん悪い方向へと働き、裁判所までもが今回の「社会的イジメ」に参加し、ギャラリーを沸かすような格好になっているようで、何とも残念な結果だと思われてなりません(つづく)。

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