コラム

 公開日: 2017-08-07 

「戦争の苦しみ今も」書籍『お母ちゃんとの約束』モデルの望月郁江さん 満州からの引き揚げ体験語る

お母ちゃんとの約束

いっちゃん 満州からの過酷な引き揚げ体験を語る


10歳と6歳、幼い姉弟がたった二人で、敗戦の1年後、満州から祖国・日本に向けて引き揚げてきた望月郁江さん(81)が8/6(日)、地元・静岡県葵区の北部生涯学習センターで行われた「語り継ぎたい戦争のはなし」(美和地域憲法を学ぶ会主催)で、当時10歳だった自らの引き揚げ体験を語りました。
この日のようすは、翌7日の静岡新聞朝刊にも掲載されました。

郁江さんをモデルに昨年、長女の望月泉さんが書籍にまとめ、『お母ちゃんとの約束 いっちゃんとキヨシちゃんが歩いた、満州五五〇キロ』(ペンコム刊)として出版。
望月さんの引き揚げ体験は、静岡新聞、毎日新聞、直木賞作家三木卓先生のコラム「鎌倉だより」、神戸新聞などに、取り上げられ大きな反響を呼んでいます。

新聞記事や本を読んだ方を中心に、「望月郁江さんのはなしを直接、聞きたい」という声もあり、今回の開催につながりました。

望月郁江さんが、引き揚げ体験を多くの人の前で話すのは、今回が初めてということもあり、会場には100人を超える参加者があり、急きょ、隣の部屋とのパーティションをはずして会場を広げるほどの盛況となりました。

もしも戦争がなかったら、と思わなかったことはありません


望月郁江さん泉さん

郁江さんは橋の設計技師だった父の仕事の関係で満州に家族で渡ります。
そこで迎える日本の敗戦。
その日から、家族の暮らしは一変します。
引き揚げもままならず、過ごす中、床下に隠した家財道具一式を強奪されたこと、
父親や日本人男性が片っ端から連行された通化事件では、父は奇跡的に生還できたものの、この時の拷問で生涯右手を上げることができなくなっていたこと、
栄養失調で弟が亡くなり、「もう少し私がコーリャンを軟らかく炊くことができたら死なせることはなかった」と今も自分を責め続けていること、
引き揚げの途中で、力尽きて亡くなったひとの遺体が日をおうごとにふえ、道の両端に積まれていたこと、
引き揚げ船のなかで、祖国はすぐそこというところで亡くなり、海中に死者を葬る家族の慟哭…。

そして何より、栄養失調で衰弱した最愛の母親と死に別れ、家族の生活は一変。
日本に生還したあとの長い人生のほうが,何倍も辛く過酷だったこと。

郁江さんは、ときおり涙をぬぐい、体験を語りながら、
「もし、戦争がなかったら」と、思わなかった日はありません。
戦争の苦しみは、戦後何十年経っても薄れることはありません。
引き揚げの途中で、力尽きて亡くなった夥しい数のひとたち、生きたいと願ったひとたちのためにも、平和であり続けなければならないと思います。
としめくくりました。

望月郁江さん

講演がおわると、郁江さんのもとに多くの方が駆け寄って、会話の輪が広がっていました。


『お母ちゃんとの約束』

『お母ちゃんとの約束 いっちゃんとキヨシちゃんが歩いた、満州五五〇キロ』は電子版もあります。

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