コラム

 公開日: 2015-08-08 

戦争という暴力行為からは、決して平和は生まれない|元米海兵隊員の講演取材メモより

講演をするアレン・ネルソンさん
(写真は講演をするアレン・ネルソンさん。2007年2月撮影)

「ネルソンさんも人殺しをしたのですか」


戦後70年。私たちは、本や映像で、あるいは体験者に話を聞くことでしか戦争を知ることができません。
「戦争とは何か」
ここで紹介するのは、2007年2月に兵庫県明石市で行われた平和を考える講演会での内容です。
当時、私は地元ミニコミ誌の記者として会場で取材をしていました。
その際のメモをもとに書き起こした議事録をここに掲載します。
・・・・・・・・・・
●元アメリカ海兵隊員のアレン・ネルソンさんが講演

 講師は元アメリカ海兵隊員のアレン・ネルソンさん。アレンさんは、1947年ニューヨーク・ブルックリン生まれ。海兵隊に入隊し、沖縄駐留を経て1966年ベトナム戦争に従軍。除隊後、戦争後遺症に苦しむ。病状回復後、1995年の12歳の日本人女子小学生に対する駐在兵によるレイプ事件がきっかけで来日。日本各地で講演。
(この後、2009年1月に多発性骨髄腫を発病し同年3月25日死去。享年61歳)

・・・・・ここより講演・・・・・

わたしは、長崎原爆資料館を訪れた。そこで、アメリカの学校では教えられなかった事実を学んだ。
わがアメリカは、一般民家の上にあの爆弾を投下したということ。
あふれる涙をこらえることはできなかった。
わがアメリカこそテロのキングと知った。
悲しいことだが、テロ行為の見本を示した。
お年寄りや、子どもや、民家の上に爆弾を落とすということは、歴史上未曾有のテロ行為である。

なぜ、かくも多くの米軍基地が日本にあるのか。
日本政府の宣伝を信じてはいけない。日本を守るためにあるのではない。
米軍駐留の本当の意味、日本政府をコントロールするためにあるのだ。
日本の現実は、まさに被占領下にある。
真の意味での、独立国家ではない。

ベトナム戦争に加わったものとしていう。戦争という暴力行為からは、決して平和は生まれない。
わたしが軍隊から帰ってきたとき、母はわたしに「あなたはわたしの子どもではない」と言い放った。
戦争は、殺戮したわたしを別の人間にかえていたのだ。
18歳で家を出たアレンは、人付き合いの良い陽気なアレンだった。
しかし、ふさぎ込んで、まったく人を寄せ付けない人間になってしまっていた。
ジャングルで殺された方がよかったのだ。
自殺を図ったことも一度ではない。
戦場のことはかたときも頭からはなれず、悪夢のように悲鳴を上げたり、戦争後遺症に悩まされていた。
こういう状態になって、わたしの家族は、自分たちがアレンに殺されると思った。わたしを家から追い出し、わたしはホームレスになった。

そんなある日、若い女性、わたしの同級生に会った。
彼女は小学4年生の担任をしていた。
彼女は、子どもたちに戦争体験を話してほしいといった。もちろんN0です。思い出したくもない。
しかし、子どもたちの手紙に心動かされ、戦争体験の話をしたが、本当に自分の戦場での体験と見たことを話すことなどはできなかった。
それを子どもたちは、許してくれなかった。
ある女の子が尋ねた。
「ネルソンさんも人殺しをしたのですか」。

答えることはできなかった。
女の子はわたしを怖がるだろう。
しかし、うそをつけず、目をつぶってやっとのおもいで「YES」と答えた。
するとおどろくべきことがおこった。
子どもたちがわたしに駆け寄ってきて、一人一人がわたしを抱きしめてくれた。
わたしも、子どもたちも、友人も泣き出してしまった。

この時の感動で一つの決心をした。
心の病を治し、戦争とは、暴力行為とはということを、話すという決意をした。
しかし簡単なことではなかった。
18年間も病気を治すためにかかった。
戦争体験について語り出したの40歳を過ぎてから。

「人を殺すのはどういう気持ちですか」


子どもたちはおとなでは出来ない質問をしてくれる。
日本の小学校での経験を話します。
「ベトナムのジャングルで、ママにあいたいと思いましたか。」という質問。
戦場の兵士がだれよりも会いたいのは自分の母親。
戦友が息をひきとる間際に何度も立ち会ったが、どの兵士も話すのはママのことです。

「人を殺すのはどういう気持ちですか」
人をあやめるというのはたまらないことです。
戦争映画とは違う。
死体をまさぐり、証拠品を探す。
死体をまさぐる。たまりません。気が狂ったように泣きわめくこともあるわけです。
古参兵が言う。「そのうちに慣れるさ。」
しかし慣れることなどない。人を殺すたびに自分の中の大事なものを壊すことになる。

「ジャングルでのトイレはこわくないですか」
戦争映画はトイレのシーンなどない。
しかし兵士にとって、トイレほど恐ろしいことはない。仲間と離れ、武器を外す怖さ。
子どもたちは.戦争を知るためにからだごとぶつかってきます。

貧しい者同士が世界で戦っているのだ。


わたし自身のことを話します。米の実態。つまり、貧困の国アメリカ。
ホームレスの女性、子どもたち。
道ばたや公園で、寝起きしている実態。
小銭をめぐんでください。こういう状態は日常茶飯事。

わたしの母はシングルマザー。
日本にも貧しい地域があるのは知っているが、米のスラム街には及ばない。
スラム街に育ったわたし。暴力と麻薬のまち。
世界に誇る米は、武器のためにある。貧しい人々を救うためにあるのではない。

1961年、海兵隊に入った。誇りだった。
家で海浜隊に入ったというと.母は、泣き崩れた。
わたしは貧乏生活に耐えられず、入隊が最良の方法だと思った。

世界の兵士はめぐまれた家庭ではない。
貧しいスラム街出身であり、大学進学の機会もない青年たちである。
金持ちは、大学に行き、留学し、いい仕事に就く。

貧しい者同士が世界で戦っているのだ。

軍隊でのことを話しましょう。
非人間的な訓練。
軍隊では頭を使うことはありえない。
命令に従うのみだ。日の出前に起き、体力強化をする。
武器の扱い方、素手で人を殺す練習をする。
来る日も来る日も人殺しの練習。

「お前たちの仕事は何だ?」
「kill」と答える。
ありったけの声をふりしぼって「kill! kill! kill!」と答える。

一人前の兵士とは、敵を殺す、または自分が殺されることを意味する。
イラク戦争に誤解がある。
戦争は、子どもたちを救うためでも、病院をたてるためでもない。
兵士たちの任務は殺しであります。

訓練を終えて、米から沖縄へ。
沖縄キャンプに入り、そこからベトナムに入る前、沖縄の山野で最後の訓練を受けた。
毎日、実弾射撃、村人を逃さない包囲作戦。
狙う標的も違っていた。
これまでは牛だったのが、人間の形になった。
アメリカでは射撃訓練を、沖縄では殺人訓練をしていたのです。

訓練が終わって街に繰り出す目的は一つ。
酒とけんかと女。金を払わない。暴力ですます。
わたし達海兵隊員は、毎日殺すという訓練を受けている。
基地があるということは、暴力そのものがまちを歩いているということなのです。

戦争にルールなどない


13カ月ベトナムのジャングルにいた。
多くの人が死んでいくのを見た。
映画とは全くちがう。
戦争にルールはありません。敵は見つけ次第殺すのです。

抵抗する男は殺され、女、子どもたちはジャングルへ逃げ込む。
わたし達はジャングルに逃げ込んだ女、子どもをさがすのは簡単でした。
何日も耳をすましていると子どもたちの泣き声が聞こえてくるのです。

わたしの悪夢の正体とは。
敵をたおして、死体を集め数をかぞえる。
男、女、子どもと別々に分けて積み上げるのです。
ちぎれた部分もあつめてこなければならない。
死体となって、動かない人、重傷を負った人、ジャングルの中で死ぬ。
ジャングルの死体も集めになければならない。

ジャングルの死体。
耳を澄ます。ハエの大群の音でわかります。
においをかぐこと。
腐った死体、腐乱死体の強烈なにおい。
涙、鼻水、全身の力が抜けるようなにおい。
これが戦争のにおい。
血のにおい。
煙のにおい。
薬きょうのにおい。

ジャングルに逃れた女、子どもが死体の山を見る。
死体に駆け寄って、泣き叫ぶ子ども。
自分の母親から離れようとしません。

足の間から何かが出ていた。赤ん坊の頭でした。


殺しにあけくれていたわたしが何をきっかけに、語ることになったのかを話します。
ある日、敵の奇襲攻撃で仲間が何人も死んだ。
わたしは防空壕に逃げこんだ。

飛び込んだとたん、そこには15,6歳の若いベトナム人の女性がいた。
わたしを見て、モンスターにでも出合ったような顔です。
わたしは這って近づいていくと、女性は苦しい息づかいをしています。見ると腰から下には何も纏っていない。
足の間から何かが出ていた。赤ん坊の頭でした。

わたしには何をしたらいいのか、知識がなかった。
やがて、驚くべきことが起こった。わたしの手の上に赤ん坊がいたのです。
赤ン坊には、いろいろなものがこびりついていました。
女性はへその緒を歯で食いちぎり、ジャングルへ逃げていったのです。

手にはお産のあとがこびりついていた。
防空壕から出たわたしは別の人間に変わっていた。
しかし、女性と赤ん坊のことは誰にもいえなかった
新しい命に立ち会い、はじめてベトナムの人も同じ人間だと言うことに気がついた。
決定的な出来ごとだった。

兵士が「ペトナム人」と呼ぶことはない。
相手国を人間でないと思わせることは常である。
原爆を日本に投下したパイロットは、人間の集団に投下したという気持ちはなかった。
Japaneseとは呼ばない。
蔑視して呼ぶJapは、人間に対する語感ではない。
ネズミと同じ語感。
日本人にとってもアメリカ人は人間ではなかった。鬼畜米兵です。
今もイラン人については、アメリカ兵は砂漠の猿という。

この出来事がきっかけで、わたしはベトナムの人たちとふれ合うことになったのです。
こうして話をしている最中も、世界各地で、おこりつつあること。
流血の地上戦が行われた沖縄。
25万を超す沖縄の人が命を落とした。その沖縄は今も米軍基地の存在でテロの恐怖に面している。
親の立場になってつらいのは、沖縄の子どもたちのこと。
うまれてからずっと、基地に囲まれている。
危険な状態。いつ、何時、爆弾が落ちてくるか分からない。
わたしは1995年の駐在兵による12歳の女子小学生に対するレイプ事件がきっかけで日本に来ることになった。1996年のことです。
すべての米軍基地が閉鎖されることを願って、抗議行動をした。すべての基地をたたんで本国に帰るべき。
日本占領の状況を終わらせ、占領のない国土をとりもどすとき。

1996年の来日の時、わたしは日本国憲法をわたされた。
9条の力強さ、美しさに目を奪われた。
いかなる核兵器、軍隊にも勝るものである。

・・・・・メモ、ここまで・・・・・

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