コラム

 公開日: 2017-09-11 

外国人の立場に立って、発信すべき情報を考える~「ABC観光」って何?


昨年の秋に、弊社神戸ビジネススクール(株)の副校長である私(三宮)は、日本伝統工芸の匠の技を紹介する社団法人を立ち上げました。ここ数年、茶道を通じて知った日本文化の奥深い世界ににどんどんはまりつつあり、それを支える職人たちの伝統の技を海外に紹介したいと考えたからです。「一般社団法人WANOBI 和の美」は、英文ウェブサイトを通じたPRを事業内容としています。

今、私が熱い想いを抱いている日本文化。その発信の仕方について、デービッド・アトキンソン氏の「世界一訪れたい日本のつくりかた」にドッキリする文章がありました。今日はそこから書いていきたいと思います。

デービッド・アトキンソン氏とは誰か

前回のコラムでもアトキンソン氏については軽くご紹介しましたが、著書より略歴をお借りします。
1965年イギリス生まれ
2011年より小西美術工藝社代表取締役社長
元ゴールドマンサックス金融調査室長
2015年より京都国際観光大使
2017年より日本政府観光局特別顧問
裏千家茶名「宗真」拝受
著書に「観光立国論」「国宝消滅」「イギリス人アナリスト日本の国宝を守る」など多数。

東洋経済新報社より2017年7月出版された「世界一訪れたい日本のつくりかた」には副題「新・観光立国論 実践編」とあります。アトキンソン氏は、アナリストとしての鋭い視点から情報を数値化しあらゆる傾向を分析して日本が観光業で潤うにはどうすればいいか、具体的に問題点と解決策を提示してくださっています。前書きにある次の言葉は、日本人へのとても心強いエールに聞こえます。

「分析をしてみるとすぐに、日本の観光業にはとてつもないポテンシャルがあることがわかってきました。
観光大国になる4条件は『自然・気候・文化・食』だと言われています。この4条件を満たす国は世界でも指折り数えるほどしかありませんが、日本はこの4条件をすべて満たしている稀な国なのです。私は、日本が世界に誇る『観光大国』になれるポテンシャルを持っていると確信しました。」  (同書より抜粋)

800枚の畳?

インバウンドという言葉がメディアを賑わすようになって5年ほどでしょうか、訪日外国人観光客の数は今も増え続けています。「爆買い」はもはや過去の現象となった感があり、今はリピーターを増やすべく体験型の観光プログラムが日本各地で考案されています。しかし、本当にそれは外国人観光客の立場に立って考えられているでしょうか?この点について、アトキンソン氏は外国人の視点から鋭い指摘を次々と、まるで忍者が手裏剣を投げるように繰り出してきます。

海外に日本の魅力を発信する際には、多言語化が必須であることは言うまでもありません。各地の観光名所では、ようやく英語・中国語・韓国語の解説や案内を掲げる取り組みが本格化してきています。しかし、問題なのはその質です。
京都二条城の特別顧問を務められている彼ならではの、次の記述の意味を考えてみましょう。

「これまで二条城は国宝ということで、『800枚の畳が敷かれている』というような情報くらいしか解説されていませんでした。」

インバウンド対策としての多言語化翻訳を手掛けている(実際には、各言語のネイティブ翻訳者のコーディネートですが)私としては、「そうそう!」と頷きたくなる一文です。日本人でも最近は地方を除き、大広間がある日本建築の家に住む人は少なくなっています。「800枚の畳」と言われて即座にどのくらいの広さか具体的にイメージできる人は、あまり多くないでしょう。ましてそれを平方メートルに換算できるのは、建築関係者に限られるかもしれません。

パンフレットなどの説明文として「二条城の本丸には800枚の畳が敷かれている」をこのまま英語にすると、どういう事が起こるでしょう。"tatami" とは何か、それが広さを表す単位にもなること、1畳とは現在は1・62㎡であること、などを予備知識として外国人が持っておかなくてはなりません。そこで、そもそも論として次のような問題点が浮き上がってくるのです。

「ネイティブチェックが機能していないという以前に、とにかく『客』は誰で、その『客』に何を知ってもらい、何を感じてもらうかという発想がごっそり抜け落ちてしまっているのです。」 同書より

ABC観光からの脱却

アトキンソン氏によると英語では「ABC観光」という言葉があるそうです。"Another Boring Church" 「また退屈な教会か~」ぐらいの意味でしょうか。由緒正しい歴史的建造物でも次々に訪れると飽きがくるというのは、世界各国共通の人間の心理なのですね。とかく日本の歴史的名所というのは教育的見地からの解説が多く、面白みに欠けると思うのは不謹慎だろうか、と私は学生の頃から思っていました。歴史や文化とはヒューマンドラマであり、そこに渦巻く人間模様が何百年の時を経て現在も目の前に存在するという事実が貴重であり驚きなのだという解釈は、洋の東西を問わず興味をそそるはずです。

「外国人観光客というのは『歴史・文化』だけを求めているわけではないのです。
文化観光がメインになるというのは、日本人目線の発想です。」

これからのインバウンド戦略は、ABC観光から一歩先へ進めて、まったく予備知識がない外国人や子どもでも「へえそうなんだ、おもしろい!」と思ってもらえる情報を発信していかなくてはなりません。そのためには、アトキンソン氏が言うように日本の何に感動してもらいたいのか、どこがどうすごいのか、をよく考えたマーケティングが必要とされます。今ある日本文の解説をそのまま英語や中国語に翻訳するだけでは魅力的な発信にはならないということを、また繰り返しておきたいと思います。

この記事を書いたプロ

神戸ビジネススクール [ホームページ]

講師 グレン・ブラウン

兵庫県中央区磯辺通1丁目1-20 KOWAビル111号 [地図]
TEL:078-570-5647

  • 問い合わせ

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

1

こちらの関連するコラムもお読みください。

次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
副校長プロフィール
副校長・ビジネスディレクター・インバウンド対策コンサルタント

さんぐう ゆうこ米国ワシントンDC生まれ。神戸女学院大学文学部英文学科卒業。1983年シティバンク大阪支店(当時)入行、法人営業部外国人付秘書として勤務。...

コース概要

■ 英語電話会議コース■ プレゼンテーションコース■ 英文 ビジネスメールコース■ ビジネス英語初級■ TOEICコース■ 新入社員向けビジネス英語研修■ ビジネス...

プロへのみんなの声

全ての評価・評判を見る>>

 
このプロの紹介記事
神戸ビジネススクールのグレン・ブラウンさん

実践的なビジネススキルを英語で学べるビジネススクールを主宰(1/3)

 「海外へ市場を広げたい」「外国からお客さまを迎える機会が増えた」「英語でプレゼンテーションができる人材を育成したい」など、グローバル化を目指す企業も多いのでは。 ニュージーランドのカンタベリー大学で心理学を専攻し、大学院で産業・組織心理...

グレン・ブラウンプロに相談してみよう!

神戸新聞社 マイベストプロ

グローバルビジネスで使える英語を最短距離で!

会社名 : 神戸ビジネススクール
住所 : 兵庫県中央区磯辺通1丁目1-20 KOWAビル111号 [地図]
TEL : 078-570-5647

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

078-570-5647

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

グレン・ブラウン(ぐれんぶらうん)

神戸ビジネススクール

アクセスマップ

このプロにメールで問い合わせる
このプロへのみんなの声

最高のスクールに出会えました!

最高に質が高いレッスンです。完全に私のためだけに作られた...

KY
  • 40代/女性 
  • 参考になった数(0

このプロへの声をもっと見る

プロのおすすめコラム
インバウンド対策には、質の高い翻訳が絶対に必要!
イメージ

私が師匠と仰ぎたいくらい尊敬しているデービッド・アトキンソン氏の最新作から、今日はインバウンド対策におけ...

[ インバウンドマーケティング ]

マンツーマン英会話レッスンサマーキャンペーン!~無料カウンセリング・体験レッスンご予約受付中
イメージ

 とってもお得な2017サマーキャンペーンのお知らせ 残暑お見舞い申し上げます。お盆休みが終わりましたが、...

[ 神戸ビジネススクールよりお知らせ ]

事務所移転のお知らせ
イメージ

【事務所移転のお知らせ】7月1日より、下記住所に事務所を移転いたしました。バーチャルオフィス(セク...

[ 神戸ビジネススクールよりお知らせ ]

英語で電話がかかってきたら!?~電話応対のための研修、承ります
イメージ

当社で英語版ホームページを作成させていただいた、司法書士事務所神戸リーガルパートナーズ様(http://kobelp.co...

[ 社内英語研修 ]

日本文化を英語で発信する試み~インターナショナルスクールでのバレンタインスペシャル茶道イベント
イメージ

 茶筅師 谷村丹後様の実演イベント バレンタインデーの2月14日、神戸市の六甲アイランドにあるインターナシ...

[ インバウンドマーケティング ]

コラム一覧を見る

スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ