コラム

 公開日: 2016-06-14  最終更新日: 2016-10-19

本人の意思が尊重される任意後見人に「取消権」は無し!

成年後見制度の3つの基本理念の中の一つに「自己決定権の尊重」というものがあります。これは本人保護の理念を源とし、本人の意思や自己決定権を尊重するということです。

特に本人の判断能力が衰えていない状態の時に、本人の意思の元、将来的に自分の判断能力が衰えてしまった際に後見人の予定者を選んでおく任意後見制度は、その「自己決定権の尊重」を最も体現する制度といえます。

しかし、自己決定権の尊重をするがゆえ、法定後見制度では認められている取消権が任意後見制度では認められていません。今回はこの任意後見制度と取消権についてご説明します。

任意後見契約締結件数は制度開始時の約15倍に

任意後見制度が開始されたのは平成12年。この年の任意後見契約締結件数はわずか655件でした。その後、契約締結件数は少しずつ伸びていき、15年後の平成26年では9,791件と約15倍近く増えています。

これは任意後見制度の認知が進んでいくのと同時に「少しでも将来の不安を解消したい」そして「できることであれば自分の信頼のおける人に自分の後見人になってもらいたい」と考える人が増えていることの現れであるといえます。

任意後見制度で認められていない取消権とは?

任意後見制度を利用する人は確かに増えていますが、冒頭でも示した通り、任意後見制度には取消権を行使できないというデメリットがあります。では、この取消権というのはどういったものなのでしょう?

取消権とは、判断能力が衰えてしまった状態で本人がした法律行為を取り消すことができる権利のことを指します。
法定後見制度では、後見人にはこの取消権が認められていますが、任意後見制度では認められていません。つまり判断能力が衰えた状態であろうと、本人が契約を取り交わしてしまえば、本人にとって不利な契約であっても任意後見人はそれを取り消すことができないのです。

なお、相手方の詐欺・脅迫による行為の取消や消費者契約法上の取消等については、財産管理事務の一環として任意後見人の権限とすることは可能です。この取消とは違いますのでご注意下さい。

このことから、後に本人が死亡した際、任意後見人であった者と本人の相続人との間でトラブルが起きることも少なくありません。

任意後見制度の利用をする際は、このような注意すべき点もありますので、司法書士や弁護士といった法律専門家などにもしっかりと相談することをおすすめします。

取消権がどうしても必要になった場合の対処法

任意後見制度において、任意後見監督人が選任される前、つまり任意後見制度が開始される前であれば、事前に本人と後見人予定者との間で話し合った事項につき代理権の追加、変更をすることができます。

しかし繰り返しになりますが、本人が判断能力が衰えた状態でした法律行為の取消権を追加することはできません。そのため仮に任意後見制度が開始された後、本人が不利な契約をしてしまった、もしくはその可能性が高い、または任意後見人が何らかの事情によって細かく本人の生活をチェックできない、などといった理由で取消権を行使する必要性が高くなった場合は、改めて法定後見の開始の申立てをして法定後見制度に切り換えていく必要があります。

その後は、選任された法定後見人が本人の財産管理、法律行為の代理、場合によっては判断能力が衰えた状態で締結した契約の取消をしていくことになります。

◆関連コラム◆
任意後見人に与えられる権限は?できること、できないこと
任意後見制度を利用するメリットと手続きの方法
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