コラム

 公開日: 2009-09-27 

薬物治療について③-「うつ病への対応⑦」-


薬の量に関する疑問について、さらに話を続けたいと思います。

一般に患者さんの立場に立てば、薬の量はその錠剤の数で判断します。
患者さんだけでなく、内科医をはじめとする殆どの医者も同様です。
しかし、こと精神安定剤においてそれは正しい判断でしょうか?

こんなエピソードがあります。
以前、統合失調症の患者さんの薬物治療で、どんなお薬を飲んでもらってもなかなかよくならないということがありました。
あまりにも効果がないので、採血を行うことにしました。
その患者さんの体内の薬の血中濃度を調べたのです。

例えば、ハロペリドールというお薬であれば、3~17の範囲の血中濃度が治療の有効域となります。
すなわち、3~17の範囲に達していれば、症状が改善する可能性が高いということです。

しかし、この患者さんの場合、5錠のお薬を飲んでいたにもかかわらず、血中濃度を調べると、1.8しかありませんでした。
要するに、薬が全然効いていなかったのです。
結局、1日に20錠くらいの大量のお薬を飲んでもらうことにしました。
それで血中濃度はようやく9になったのです。
治療効果が表れ始め、それまで全く改善しなかった精神症状が徐々に落ち着いてきました。

普通は5錠のお薬飲んでいれば、血中濃度10~15くらいにはなります。
しかし、この人の場合は1.8しかなく、15~20錠飲んでようやく9なのです。
つまり、薬の量というのは、こと精神安定剤においては必ずしも錠剤の数で判断できないのです。
同じ錠剤の数であっても、体内の吸収には差があり、血中濃度が違ってきます。
薬の量の多寡を判断するのは錠剤の数ではなく、血中濃度なのです。

残念ながら、血中濃度を測ることのできる精神安定剤はごく一部に限られています。
ただ殆どの安定剤において、この原理は当てはまるものだと思います。
ですから、薬の量が気になっても、錠剤の数だけに惑わされないことです。

前回も述べたように、病気を治すのが大事なことであり、そのために必要な量の薬を内服することです。

                              泉 和秀

この記事を書いたプロ

いずみハートクリニック [ホームページ]

精神科医 泉和秀

兵庫県神戸市東灘区岡本2-7-3 ピークス岡本3F [地図]
TEL:078-453-8010

このコラムを読んでよかったと思ったら、クリックしてください。

「よかった」ボタンをクリックして、あなたがいいと思ったコラムを評価しましょう。

2
<< 前のコラム 次のコラム >>
最近投稿されたコラムを読む
 
このプロの紹介記事
泉和秀 いずみかずひで

誰もが持つ“ダイヤモンドの心”。その輝きを取り戻すために(1/3)

 神戸・岡本、山手幹線沿いにある「いずみハートクリニック」。明るい表通りに面したこのクリニックを昨年(2008年)4月に開業したのが同院長・泉和秀さんです。 自然光がふんだんに射し込む受付・待合室から診察室まで、全室にわたり院内だという...

泉和秀プロに相談してみよう!

神戸新聞社 マイベストプロ

会社名 : いずみハートクリニック
住所 : 兵庫県神戸市東灘区岡本2-7-3 ピークス岡本3F [地図]
TEL : 078-453-8010

プロへのお問い合わせ

マイベストプロを見たと言うとスムーズです

078-453-8010

勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。

泉和秀(いずみかずひで)

いずみハートクリニック

アクセスマップ

プロのおすすめコラム
直感を信じる

ここ数日、凍りつきそうな寒い日々が続いています。そんな中、ふと夜空を見上げると、月と星がとてもきれいに輝...

どんな言葉が人の心に伝わるのか?

どんな言葉が人の心に伝わるのか?それはわかりません。患者様に「この前、先生に言っていただいた言葉がす...

優秀な人が陥る罠(わな)

優秀な人が人間関係において陥る罠というのがあります。優秀な人は勉強ができたり、仕事ができたりします。...

幸せになる心の教育

今の学校教育にあればいいなあと思うことがいくつかあります。そのひとつに『幸せになる心の学問』というような...

エネルギー量の高い人

何かをなすためには、エネルギー量ってとても大事だと思います。人格の良し悪しにかかわらず、エネルギー量が...

コラム一覧を見る

人気のコラムTOP5
スマホで見る

モバイルQRコード このプロの紹介ページはスマートフォンでもご覧いただけます。 バーコード読み取り機能で、左の二次元バーコードを読み取ってください。

ページの先頭へ