コラム

 公開日: 2009-08-28 

『心の居場所』-「ダイヤモンドの心を見つめる医療⑥」-


うつ病のとき、不登校になったとき、病院では先生から
    「しばらく学校や仕事には行かずに、家でゆっくりと休んでくださいね」
と言われることがあります。

それはうつ病であればエネルギーがなくなった状態であり、不登校であれば学校に行く力と心の余裕を失った状態であり、休養によってエネルギーを回復させる必要があるからです。

では学校や仕事を休み、家にいればその人は休養を出来るのでしょうか?
確かに誰でも体を休めることは出来ます。
けれども、心は・・・?
心は休めていますか?

子どもが学校を休み、あるいは夫が仕事を休み続けたなら、家族はその休んでいる人のことを理解し、受け入れてあげることができるでしょうか?

「病院の先生は休むように言われたけれどね。
本当は甘えているだけじゃないの?
本当はさぼっているだけじゃないの?
一体いつまで休むつもりなの?
このままで将来はどうするの?」
家族からこうした言葉を投げかけられるなら、学校や仕事を休んでいても、家の中では針のむしろです。

また、家族がこうした言葉を発するのを抑え、我慢していたとしても、そうしたことを思い続けていたなら、その思いはちょっとした目つきや仕草に表れます。
心の病の方は周囲の目に非常に敏感なので、そうした目つきや仕草からくる思いにはすぐに気がつきます。

すると心ではこんなふうに思うようになります。
「本当に迷惑ばかりかけて悪いなあ。
私なんていない方がいいのかもしれない。
私なんて何の価値もない」
罪悪感に襲われ、体は休んでいても、心の中は針のむしろ状態です。
針のむしろとは、その人にとっての『心の居場所』がないということです。

このような具体的なたとえを通して話を聞くと、よくわかるかもしれませんが、「ゆっくりと休養して下さい」と言われたときに大事なのは、体の休養よりもむしろ心の休養です。
心の休養が出来て初めて、心のエネルギーが回復し、心に余裕が生まれてくるのです。
心に余裕が生まれてくることで、やる気が戻り、自分から何とかしていこうという力が出てくるのです。

休養のときには、心の休養が出来るように『心の居場所』を持つことです。
家族は、『心の居場所』を提供してあげることです。
『心の居場所』とは、誰からも責められることなく、ありのままの自分を受け入れてもらえる場所のことです。
何も出来なくても、その人が生きているだけでいい。
寝てばかりでも、そこに存在してくれるだけでいい。
そのような気持ちで受け入れられる場所です。

ときに家族が本人を心から受け入れ、『心の居場所』を提供しようとしても、本人自身が自分を追い込み、『心の居場所』を失っていることがあります。
そのときには、ただ責めないだけではなく、
「今は一日一日を粘って過ごすだけでいい。
それで十分だよ。
いや、十二分だよ」
というような声かけをしてあげて、より積極的に『心の居場所』を作ってあげることです。

心の問題や病を抱えた方には、まず『心の居場所』を提供してあげる。
それが関わりの第一歩です。

                              泉 和秀

この記事を書いたプロ

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精神科医 泉和秀

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TEL:078-453-8010

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