コラム

 公開日: 2012-02-11 

コミュニケーション技法の一考察①

きっと多くの人が、人とのコミュニケーションに悩んでいます。
もし、誰とでも自然と通じ合うようなコミュニケーションをとることができたなら、悩みのかなりの部分が解消されるだろうと思います。

心の医者という私の仕事では、コミュニケーションがとても重要です。
どうすれば、どんな人とでも上手くコミュニケーションをとることができるのか?
長い間考え続け、今もなお探究し続けている課題です。

世間では「いかにしてコミュニケーションスキルを上げればいいのか」といった研修やセミナーがあふれるほどあります。
ですから、このテーマについて語れば、一冊の本にでもなるでしょう。
それは少し大変なので、ここでは、一般的にはあまり取り上げられない視点から、コミュニケーション技法について考察してみたいと思います。

コミュニケーション技法には、いくつかのポイントがあります。
まず、『自分自身のコミュニケーション能力』です。
相手の目を見て話す、相手の話を聞く、共感するように心がける、話の要点を絞り込む、ボディランゲージを使って表現する…。
いろいろポイントがあります。
これらについては、様々なところで述べられています。
ですから、ここではこれ以上踏み込まないことにします。

2番目は、『自分自身の心の状態』です。
人とのコミュニケーションが上手くできるかどうかの本当のところは、表面的な技法ではありません。
    “自分自身がどんな心の状態にあるのか?”
    “相手に対して、どのような思いを抱いているのか?”
こうした思いがその人格から発せられる波動として、滲むように相手の心に伝わるのです。

わかりやすい例をあげるなら、相手に対して見下すような思いを持っている人がどのような丁寧な言葉で話そうとも、何か嫌な感じがするものです。
イライラして気持ちの余裕のない人に話しかけられると、こちらも何となくざわざわと落ち着かない気持ちになります。
一方、どのようなことがあっても怒ることなく、笑顔でいるような人が話すひと言ひと言は、話の内容のいかんにかかわらず、ほっとしたり、心が楽になったりします。
見落としがちな視点ですが、話をする人の心の状態や相手への思いは、意外にコミュニケーションに影響するものなのです。

3番目は、『相手の理解能力の見極め』です。
例えば、相手が知的障害を持っていたり、認知症だったりする場合、いつもの自分の感覚で話をしても、相手に伝わらないことがあります。
それは、誰でもわかると思います。
でも、実際には、普通に過ごしている人とのコミュニケーションにおいても、そうしたことがままあります。
普通に過ごしている人たちの理解能力は様々なのです。

例えば、人の感情を察したり、空気を読んだりすることがとても苦手な人もがいます。
そうした人には、言葉のニュアンスのようなものは伝わりません。
勉強や仕事で思考訓練を積んだ人とそうでない人とでは、理解能力に一定の差が見られます。
人はつい「こちらの話したことを相手はすべて理解しているはずだ」と思いがちです。
しかし、相手には相手相応の理解能力があり、むしろ「話したことをすべて理解しているといった人はほとんどいない」と考えておく方がいいように思います。
相手にもいろいろな理解能力があるということを知ることです。
それを見極め、その理解能力に応じたコミュニケーションを考えていくことだと思います。

実際、診察でも丁寧に詳しく説明するだけではダメなことがあります。
いろいろ話すとかえって頭には何も残らなかったり、混乱したりする人もいます。
ときには、あえて話を広げず、ひとつの話に絞り込んで、繰り返し伝えることも大事です。

自分なりの強固な価値観や考え方に縛られている人も難しいものがあります。
こうした人は基本的に他の人の価値観や考え方を排除しようとする思考回路になっています。
論理的にこのように考えるのが最も正しく、こうするのが最もよいという話をしても全く通じません。
自分以外の他の考え方に対する理解能力に欠けているのです。
ですから、こうした人に対しては理解を促すのをあきらめ、少しでも穏やかな関係を維持することを目的としたコミュニケーションを図らなくてはなりません。

コミュニケーションには、相手の理解能力を見極めるといった視点があるのです。

この記事を書いたプロ

いずみハートクリニック [ホームページ]

精神科医 泉和秀

兵庫県神戸市東灘区岡本2-7-3 ピークス岡本3F [地図]
TEL:078-453-8010

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