コラム

 公開日: 2011-09-11 

薬をやめられない?

心療内科や精神科で使う薬には、いろいろなものがあります。
いくつかの種類の薬(統合失調症や躁うつ病の薬)は、高血圧の薬のように付き合いながら、ずっと飲み続ける必要があります。
しかし、一部の薬は本来であればやめることはできるにもかかわらず、いつまでもやめられないということがあります。

その理由のひとつに、
    “自ら薬をやめようとするために、かえってやめられない”
ということがあります。
自ら薬をやめようとすることが、やめられなくなる理由なんてどういうことでしょう?
現実にはそうしたことがあります。

一般に、心療内科や精神科の薬(うつ病や不安、パニックのお薬、睡眠薬など)による治療では、見せかけの改善と本当の改善があります。
薬を処方されて内服し、症状がなくなったと思ったとき、その時点では薬によって症状がカバーされただけの状態です。
いわゆる見せかけの改善の状態です。
ですから、この時点で薬をやめると十中八九、再発します。
当たり前ですね。
薬で症状がカバーされているだけですから、止めるとカバーされていた症状が再び出てきます。

一方、しばらく薬を飲んでそうした安定した状態を続けていると、症状は本当になくなってきます。
本当の改善ですね。
こうなると、薬を徐々に減らし、やめていくことができます。

これが心療内科や精神科の薬による治療の現実です。
しかし、薬をやめたいという意識を強く持っている人は、見せかけの改善の状態ですぐに内服をやめてしまいます。
再発してまた治療を始めるのですが、ちょっと良くなるとまたやめてしまいます。
冷静に考えるとおかしいのですが、こうしたことを数十年も繰り返しているような人がいます。

もうひとつ、自ら薬をやめようとしてかえってやめられないのは、不安があるにもかかわらず、薬をやめようという意識が強過ぎるときです。

薬をやめようという意識が強いと、意識は常に薬のことに向いています。
薬のことに意識が向いていると、薬によって落ち着いている症状に対する不安にも意識が向くことになります。

こうした人が自ら薬をやめると、薬をやめたくてやめたにもかかわらず、
    「でも、薬をやめてしまって大丈夫かな。
    また、症状が出てこないかな」
という不安が出てきます。
その不安がまた症状を呼び込みます。
その結果、なかなか薬をやめられなくなります。

不安のある人が薬をやめる場合、薬をいつやめるかについては意識せず、医者に任せておくのがいいと思います。
やめるとかやめないとか、そうした意識を切り離し、
    「調子良く過ごせているなら今はいいや。
    あとは先生に任せておこう」
とすることです。
薬をやめる時期というのは、その人が何ヶ月か調子良く過ごし続け、習慣的に薬を飲んでいるけれども、症状や薬そのものへの意識が薄らいできたときです。
そうしたときに薬をやめると、そのまま問題なく過ごすことができます。

もちろん、例外はあります。
減らすべきときに減らさず、漫然と薬を出し続ける先生にかかっているときです。
そんなときはつい自らやめようと考えます。
そうしなくては永遠に止めることができないように思います。

それでも、自ら薬をやめるのはやめましょう。
そうした不安があるときには、先生に治療の見通しについて訊ねてみることです。
説明が曖昧で、治療の見通しが見えないと感じたときは、別の病院に変わってもいいかもしれません。

薬の自己中断には様々な不利益があることを知っていただき、必要なときには薬を飲み、本当に不必要になれば薬をやめるという適切な薬物治療を行っていただければと思います。

この記事を書いたプロ

いずみハートクリニック [ホームページ]

精神科医 泉和秀

兵庫県神戸市東灘区岡本2-7-3 ピークス岡本3F [地図]
TEL:078-453-8010

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