コラム

 公開日: 2011-08-28 

カウンセリングは魔法か否か?

カウンセリングに関しては、様々な専門家と言われる人たちがいます。
ですから、カウンセリングに関して安易な意見を述べるのは差し控えたいと思うのですが、ひとりの人として、ひとりの医者として感じることを述べてみたいと思います。

まずカウンセリングは魔法か否か?ということです。
世間では何か悩み、困ったことがあったとき、
    「カウンセリングを受けてみたら?」
としばしば提案されます。
そこには
    「カウンセリングを受ければ、魔法のように気持ちのしんどさを和らげてくれて、問題を解決してくれる」
という期待があるような気がしてなりません。

ごくたまには、そうしたこともあるでしょう。
しかし、現実のほとんどはそうではありません。
悩み、困ったことの大部分は、魔法のようにすぐに解決するものではなく、受け入れ、向き合い、乗り越えていく-ときにはそこに人としての成長が必要になります-のに、それなりの時間を要します。
ですから、魔法の期待を持ってカウンセリングに臨むなら、その期待はしばしば裏切られることになるだろうと思います。

では、カウンセリングには一体、どれほどの効用があるのでしょうか?
これも専門家からは様々な意見があるでしょう。
ただこれまでにいろいろなカウンセリングを見てきて、その現実を見ていると、こんなふうに思います。
多くの場合、カウンセリングは、自分の話を受け入れてもらい、苦しみに寄り添ってくれる場として意味があります。
しかし、こと問題が解決の方向に向かっているか否かとなると、現実は何も変わっていないということもしばしばあります。

人によっては10年、20年とカウンセリングに通っている方がいます。
実際、そうした人たちと話すと、自分の良き話し相手と話をするためにカウンセリングにきているという感じがします。
もしかすると、いつかその問題を解決できるのではないかと思って来られていたのかもしれませんが、10年、20年通って変わらないものはなかなか変わるものではないような気がします。

カウンセリングの効用を考えるとき、カウンセリングに来られた人のパーソナリティや抱えている問題の大きさによっても、どの程度の効用が得られるかが変わってきます。
ただ実際にはそれだけではなく、カウンセラーの技量と人格が大きく影響しているように思います。

カウンセリングとひとことで言っても、心理療法をはじめ、様々な技法があります。
どのような技法を持っているかによっても、治療は大きく異なるでしょう。
一般の方にとっては
    「あそこは認知療法をやってくれるらしい」
    「あそこは催眠療法も取り入れているらしい」
といった情報がどのカウンセラーにかかるかの判断の根拠にもなります。
しかし、カウンセリングにとって一番大事なのは
    “カウンセラーの人格の広さ・高さ・精神状態”
ではないかと思います。

大学生の頃、私が心の医者を目指していることを知っている先輩からこのように言われたことがあります。
    「自分がうつ病などの精神的な病を持っていなければ、心の医者としての仕事はやれないよ」
私はこの言葉を聞いたとき、少し納得する部分と大きく納得できない部分がありました。
もし、自分がうつ病などの経験をしたなら、うつ病の人の心の状態を、身を持って理解できるということがあるでしょう。
ただいつまでもうつ病であってはならないと思います。
うつ病から脱したという経験こそが必要だと思うのです。

心悩み、苦しんでいる人を沼で溺(おぼ)れている人に例えるなら、カウンセラーも自ら沼に入って溺れることでその苦しみを理解できます。
しかし、自らが沼に溺れた状態にあって、溺れている人を救うことはできません。
自分自身は岸に這(は)い上がり、そこから手を差し伸べてこそ、溺れている人を救うことができると思うのです。
カウンセラーはまず、自らの精神状態を健康に維持していることが大事なことです。
うつ状態にあるカウンセラーが、うつ病の人を救うことはかなり難しいということを知ってほしいと思います。

次に、カウンセラーの人格の広さです、
それは、多くの人を許容する器です。
人を導く方法をいくつも持っているということにもつながる多様な考えを受け入れることのできる能力です。
ここの部分はどうしても人生経験が必要なので、若いカウンセラーにそうしたことを求めるのは酷な部分があります。
カウンセラー自身も人のカウンセリングを通して成長している部分があるのです。

ただ大事なのは、カウンセラーがそうした努力をしているかです。
自分自身の心と戦って、すべての人の中にダイヤモンドの心を見つめようとしているか?
より多くの人を許容しようとしているか?
昔、ある病院で一緒に働いていたカウンセラーが
    「私はこの病気の人は好きだから診るけれど、他の病気の人は診ないから」
と言って、自分で決めたテリトリーの人だけをカウンセリングしているということがありました。
一般病院というあらゆるニーズのある中で、その姿勢で働くのは、自分の趣味に没頭しているのであって、仕事をしているのではありません。
カウンセラーには、多くの人を許容する人格の広さが必要だと思います。

また、人を導く方法をひとつやふたつしか持っていなくて、その方法では解決に導けないにもかかわらず、いつまでもそのわずかの方法だけに固執しているカウンセラーがいます。
これも問題ではないかと思います。
結局、いつまで経ってもその人の問題は解決することなく、時間だけが過ぎ去り、その人の人生そのものの時間が奪われていくからです。
私はいつも3ヶ月(もう少し長いこともありますが)ごとくらいに自分の治療の見直しを心がけています。
その方法がその人に合ったものであれば、概ね3ヶ月くらいで何らかの変化が見られ始めます。
もし、その期間に全く変化が見られないのであれば、やはり自分のアプローチには欠けている部分があるのではないかと思います。
だから、その時点でもう一度自分の治療を見直し、何とか模索して新たな方法で関わろうとします。
そうした努力や創意工夫を繰り返していると、カウンセラー自身もふと気がついたときに、いくつもの方法を身につけています。

カウンセリングの効用を考える上で、最後にどうしても話しておかなくてはならないのは、カウンセラーの人格の高さの問題です。
人格というのは抽象的で難しい言葉ですが、このような例をあげるとわかるかもしれません。
例えば、陰ではいつも人の悪口を言って、人を騙してでも儲けられたらいいなどと考えている人は、人格的には低い人ではないかなと思いますね。
もし、このような人にカウンセリングをしてもらったとしたなら、良くなるような気がするでしょうか?
きっとしませんね。
カウンセリングの場面だけこの人が人格者の仮面をかぶり、一時的にいい影響を与えることがあったとしても、時間の流れの中ではいずれボロが出てきます。

人格から滲み出る光は、その人に関わった人たちを見るとはっきりとわかります。
    「あの先生(あるいは、カウンセラー)に診てもらった人はみんな元気になっている。
    病気が治っただけでなく、人間も変わり、人生そのものが変わった人もいる」
人格の高いカウンセラーに関わったなら、必ずこうした人が出てきます。
それはそのカウンセラーの心のステージの高さが、心悩み、苦しんでいる人の心の奥にある同じ光を引き出すからです。

カウンセリングというものに求めるとき、そこに自分の思い描くような魔法はありません。
ここに述べたようなことをひとつの視点として持っていただければ、よりよいカウンセリングを見つけるきっかけになるのではないかと思います。

この記事を書いたプロ

いずみハートクリニック [ホームページ]

精神科医 泉和秀

兵庫県神戸市東灘区岡本2-7-3 ピークス岡本3F [地図]
TEL:078-453-8010

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