コラム

 公開日: 2011-05-25 

パンチを打つ

「金鉱まで残り3フィート」(シャロン・レクター、グレッグ・リード共著、きこ書房)という本の中に、世界ヘビー級選手権で4度優勝したただ一人のボクサーであるイベンダー・ホリフィールドのこんなコメントがあります。

「自分が受けるパンチばっかり気にしていたら、床に長々とのびて終わるのが関の山だ。
自分が受けるダメージはあまり気にしないことにしているんだ。
気にするのはこっちが与えるダメージだけだね」

「ボクシングに限ったことじゃないよ。
自分の方へ飛んでくるパンチばっかり気にするやつが多すぎる。
悲惨なニュースを見たり、友達の愚痴話を聞いたりしてさ。
要するに自分が何発パンチを受けてるかにばっかり気がいってるんだ。
それじゃダメだ。
殴り返すこと、気を抜かないことに集中すべきなんだよ」

さすがチャンピオンとなって、自らの夢を実現した人のコメントは深いなあと思いました。

確かに、私たちの多くは周囲から受ける悪い影響ばかりに目が向いてしまい、翻弄されています。
    「どんなふうに見られているだろうか?」と周囲の人の視線が気になる。
    「なぜこんなふうに言われるのだろう?」と周囲の人の言葉が気になる。
    友人の悩みの相談に乗っているうちに悩みの暗い雰囲気に引き込まれて、気分が落ち込む。
多かれ少なかれ、殆どの人にこうした傾向があって、ホリフィールドのような人は稀だと言っていいかもしれません。

ただホリフィールドの言葉には、本当の意味で人生を幸せに生きる秘訣があります。
自分の方へ飛んでくるパンチ、すなわち、周囲から受ける悪い影響ばかりに目を向けるなら、その心はいつも不幸せです。
そして、その先には心の病の世界が待っています。

それを脱する方法は、自分が受けるダメージはあまり気にしない。
それは多くの人にとって簡単なことではありませんが、少なくともそのように心がけ、自分の打つパンチに集中することです。

自分の打つパンチに集中するとは、
    『今の自分のできることだけに集中する』
ということです。
    人の視線や言葉が気になってもとにかく目の前の仕事だけをやろう。
    気になった心から離れられないときには、心の中でとにかく「ありがとう」「愛しています」とつぶやいて心をクリーニングしよう。
たとえばそうしたことです。

また、自分の打つパンチに集中するとは、
    『今、自分は人の役に立つために、人に愛を与えるために何ができるかを考える』
ということです。
周囲の人からいかにして愛をもらおうかとすることではなく、いかにして愛を与えようかと考えることです。

私は思春期の頃、対人緊張が強く、対人恐怖的なところがありましたが、そのときは周囲の目や言葉を気にしていました。
そして、周囲の人から優しい視線や言葉をかけてもらえないだろうかということばかり思っていました。
実際、そんなことばかり考えていると、いくら周囲の人が優しい視線や言葉をかけてくれても満足できません。
むしろ、嫌な視線やきつい言葉にすぐに飛びついて、そのことにとらわれていました。
医者になった頃もまだそうした傾向性があったので、患者さんと接するときにはとても緊張し、話がうわの空になりそうなときもありました。

それを克服するきっかけになったのが、この「パンチを打つ」という考え方です。
    今の自分のできることだけに集中する。
    相手の方の役に立つために、相手の方に愛を与えるために何ができるかを考える。
実際、これを実践するようになると、対人恐怖的なところが遠のき、多くの患者さんの心の病の治癒や幸せになるための援助ができるようになりました。
それは私の幸せにもつながり、私自身の成功だったと思います。

自分が受けるパンチを気にするのではなく、自分がパンチを打つことに集中する。
本質は、以前に書いた「心(こころ)のハンドルを握る」というコラムと同じことですが、また違った角度から見てみると、心の腑に落とすことができるかもしれません。

この記事を書いたプロ

いずみハートクリニック [ホームページ]

精神科医 泉和秀

兵庫県神戸市東灘区岡本2-7-3 ピークス岡本3F [地図]
TEL:078-453-8010

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