コラム

 公開日: 2011-05-08 

年齢に応じた生き方を考える

多くの人を診療させていただいていて感じることは、人には “40~50才頃に心と体の面における人生の転機がある”ように思われるということです。

30代前半くらいまで、気持ちにおいて死というものは遥かに遠く、未来はまだ無限にあるように感じられます。
体の面では、少々の無理を重ねても、一晩寝ればまた頑張れるというような強いゴムのような身体を維持しています。

それが40才を超える頃、「今までだったらできたのにどうして?」と感じたり、「自分の人生は本当にこれでいいんだろうか」と考えたりし始めます。

30代前半くらいまでは、何の努力をしなくても、強い負荷をかけても跳ね返す強いゴムのような体のおかげで無理がきくものです。
それが40才頃からは免疫力の低下によってストレスがかかると、ガシャガシャと体のあちらこちらが壊れ始めます。
肩こり、背中の張り、腰痛、眼精疲労から始まり、口内炎、歯周病、胃炎、めまい…。
さらには不眠、自律神経失調症、高血圧、逆流性食道炎、胃潰瘍、ガン…など、最悪の場合には修復不可能なレベルの病気になることがあります。

気持ちの面にも変化が訪れます。
しっかりとした価値観と人生目標があり、自分のアイデンティティを持って生きている人はあまり問題ありません。
しかし、思春期の頃に十分なアイデンティティを築けず、ただ目の前の忙しさに没頭することで自分の心の課題から目をそらし、自分を維持してきた人たちがいます。
そうした人たちは、40才になって人生の先が見え始めるこの時期に、再び自らのアイデンティティの不安定さに向き合わざるを得なくなってくるのです。

「今までとにかく目の前のことだけ考えてここまで生きてきたけれども、このままで一生を終えると思うと何の希望も見えない。
でも、だからと言って年は50才近くになり、いまさら何かできる気もしない」
そうしたことで悩み始めるのです。

このように40~50才頃には、心と体の面における人生の転機があります。
もちろん一部の人は、全くこうしたことを意に介さずに元気に活躍しています。
ただ意外に多くの40~50才代の人がこうした問題を抱えて、悩んでいるのです。

悩んでいる人には、40~50才代というのはこうしたもので、他にも悩んでいる人がいるという事実を知っていただくことが何よりも大事なことだと思います。
そして、年齢に応じた自分を受け入れることです。
ただがむしゃらに生きてきたこれまでとは違って、これから本当の自分に目覚めて生きていくための転機の時期なのです。

そのためにはまず体から整えることです。
40才を過ぎると免疫力が落ちてくると言いましたが、ちょうどこの時期、多くの人は、仕事が忙しくなって運動不足がちになります。
そのことで体力そのものが落ちてきます。
また、残業や飲酒になどによる夜更かし、(一昔前にはなかった)長時間のパソコン業務による負担によって、極度の交感神経の緊張をもたらし、自律神経に負担をかけます。
これらすべての要因が自らの体を壊していきます。

ですから、若いときのように自分の限界に挑戦する気持ちはあっても、それだけでなく、自分の限界を知ることが大切なことです。
一番やるべきことは、力任せに仕事をしないことです。

なかなかできないこともありますが、就寝はその日のうちに、できれば23時までに寝るようにすることです。
睡眠時間よりも就寝する時間の方が大事です。
副交感神経が優位になり、体の免疫力が落ちてくる23時から朝の5時くらいまでの時間に休むことが何よりも大事なことです。

また、夜や休みの日には「~ねばならない」という考えから離れて、ちょっとわがまま勝手にやりたいように過ごす時間を持つことです。
現実から目をそらしたくて飲む深酒は体に負担をかけて毒になりますが、楽しんで飲むなら飲酒もいいかもしれません。
ボーっとしたり、家族と団欒の時間を持ったり、大笑いをしてみたり…。
「~ねばならない」ではなく、「やりたいからやる」時間を持つことが交感神経の緊張を解き、免疫力をアップさせます。

さらに定期的に運動することで体力がアップしてくれば、より疲れにくくなってきます。

体は人生の土台であり、身体のことを無視して仕事に打ち込んでも、いずれ崩れるときがきます。
まず体を整えることです。

気持ちにおいては、自分で自分の限界を作らないことです。
40才? 50才? 人生はこれからです。

歴史を紐解けば、56才から17年間かけて日本全国を歩いて測量し、初めて日本地図を作った伊能忠敬という人がいます。
彼のすごいのは、30~50才までが平均寿命と言われた江戸時代にそうしたことを行ったということです。
今で言えば、90才のおじいさんが突然に全世界を歩いて回るようなものです。

「ケンタッキー・フライド・チキン」のカーネル・サンダースは、65才のときに自分の持っていたフライドチキンのレシピの売り込みを始めました。
65才の彼は、あの白いスーツ姿で自らの車に乗り込み、来る日も来る日もレストランに売り込みを続けました。
なんとその売り込みにトライした回数は1010回、歳月にして2年間。
60代後半になって日夜、車に寝泊まりして、食べるものがないときにはそのチキンをひとかじりするだけ。
毎日毎日断られ続けても、なお粘ってやり続けたことによって、今の「ケンタッキー・フライド・チキン」があります。

伊能忠敬にせよ、カーネル・サンダースにせよ、その普通では考えられないその年齢から取り組んだことが、その人生の最大の功績となりました。
40~50才代にして心と体の面における問題が出てきたなら、それが人生の終わりではありません。
人生をあきらめてはなりません。
気付いたそのときが、人生の転機です。
もう一度、心と体を整えることです。
本当の自分に目覚め、これから本当の人生を生きることだと思います。

この記事を書いたプロ

いずみハートクリニック [ホームページ]

精神科医 泉和秀

兵庫県神戸市東灘区岡本2-7-3 ピークス岡本3F [地図]
TEL:078-453-8010

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