コラム

 公開日: 2011-01-24 

悪の心の発生原因①

この世で生きている人の心には、多かれ少なかれ悪の心が浮かんでくるものです。
それでも多くの人は善の心の方が勝り、バランスをとって社会生活を営んでいます。

悪の心について考えるとき、私は二つの映画を思い出します。
ひとつは「スパイダーマン3」、もうひとつは「スターウォーズ」シリーズです。

「スパイダーマン3」には3人、正確には4人の悪が出てきます。
ニューゴブリンとなってスパイダーマンを殺そうとする親友のハリー・オズボーン。
スパイダーマンことピーター・パーカーの叔父を殺し、サンドマンと化したフリント・マルコ。
そして、自分の名誉だけを求めるカメラマンであり、最後にはヴェノムと化したエディ・ブロック。
さらに、この映画ではスパイダーマン自身も、一時は悪の心に囚われてブラックスパイダーマンとなります。

映画そのものに対する批評はいろいろあるでしょうが、私はこの映画はとても深いなあと思います。
それは人間が悪の心に落ちるときにはいろいろなパターンがあり、その悪の末路にもいろいろな道があるのだということをこの映画は教えてくれるからです。

まず正義の心を持っているはずのスパイダーマン。
スパイダーマンは人を思い、志高く正義のために戦うヒーローです。
しかし、そんなヒーローも周りから評価され続けるうちに、自らの栄光だけに囚われていく。
自分はすごいだろうという評価を求める心に囚われ、周りの人の心が見えなくなる。
さらに、身近な叔父を殺されたという恨(うら)みの心に囚われたとき、それが怒りの心へと転化し、謎の液状生命体にとりつかれて、ブラックスパイダーマンとなってしまいます。
これが、スパイダーマンが悪に落ちていく過程です。

ブラックスパイダーマンは無慈悲な心で自らが裁こうと、サンドマンを倒します。
サンドマンは悪であり、それを倒すのは正しいことをやっているように見えます。
けれども、何かが違います。
それは、その心が自我我欲からくる怒りに囚われての行動だからです。
このスパイダーマンがどのようにして本来の姿を取り戻すか?

ピーター・パーカーの心の奥にはやはり正義の心があります。
無慈悲な行動で親友や恋人を傷つけるうちに、自らその異常さに気付きます。
そして反省し、本来の愛と正義の心を取り戻します。

次に、親友のハリー・オズボーンです。
父親をスパイダーマンに殺されたと誤解し、スパイダーマンを恨み、スパイダーマンの敵となります。
その心の奥にあるのは唯一の肉親であり、心の支えであった父親を失った寂しさです。
その寂しさが憎しみへと転化し、悪に転じるのです。

しかしその一方で、彼の心の奥には父親に対する愛情と同様に、かけがえのない親友としてのピーター・パーカーへの友情の心があります。
ピーター・パーカーであるスパイダーマンが窮地に陥ったとき、彼の心の中では葛藤が起こり、憎しみの心よりも友情の心が勝り、最後はスパイダーマンの味方となって、悪に立ち向かいます。
そして、最後には親友を守るため、スパイダーマンの盾となって死んでいきます。
一旦は悪に陥った親友だったけれども、最後は愛の行動をとって死んでいくのです。

そして、サンドマンと化したフリント・マルコ。
彼は世間の目から見れば犯罪者であり、悪人です。
しかしなぜ、彼はそのような悪人になったのか?

彼にはたったひとりのまだ幼い病気の娘がいます。
その娘には死が迫っており、病気を治すためには金を必要とします。
しかし、彼には金がなく娘を愛しているがゆえに、その娘を失ってしまうのではないかという恐れの心に襲われます。
その恐れの心が彼を強盗という悪にしたのです。
彼がピーター・パーカーの叔父を殺したのは偶発的な事故でした。
彼はお金を手に入れたかっただけで、叔父を殺したことについては後悔し続けていたのです。

戦いが終わり、マルコはピーター・パーカーにその思いを語ります。
ピーターも自らが親友や恋人にひどいことをしてしまったがゆえに、その思いを理解できる人間となり、理解します。
そして、裁くのではなく、マルコを許すのです。
「許しの心」こそが、お互いを愛の心を持った本来の姿に戻す道なのです。

一方、ヴェノムと化したエディ・ブロック。
彼は身勝手で自我我欲に囚われた人間であったけれども、その自分の名誉を傷つけられた恨みからその心はピーター・パーカーの死を願うほどの悪の思いに満たされます。
その悪の思いが謎の液状生命体を引き寄せ、ヴェノムに化します。

彼はスパイダーマンとの戦いで、最後に一瞬、その液状生命体から引き剥がされ、人間としての自分を取り戻す機会を与えられます。
しかし、再び自らその液状生命体と一体化しようとして死に絶えます。
この映画の中で、彼の心の中には先の3人に見るような善の心は見えませんでした。
普段から自我我欲に囚われた人生を生き、善の心は奥深く封印されてしまっていたのでしょう。
このようにあまりにも悪の心が強く出ている人は救えないことがあるというのもこの世界の現実なのだと思います。

残念ながら、診療を行っていても同じようなことがあります。
マイナスの心に囚われていても、その奥に強い愛の心があったり、自らを振り返って反省する心があったりする人は救うことができます。
しかし、エディ・ブロックのように自らの不幸の原因をただ周りのせいだけにして、周りの人間に攻撃的な思いを強く持つ人は、導きをもたらすことが非常に困難です。
この映画にあるようにそのマイナスの心から引き出そうとしても、自らそのマイナスの心に飛び込んでいこうとするからです。

悪にもいろいろなパターンがあります。
それはスパイダーマンのような正義に生きるヒーローにもあり、また、ハリーやマルコのように愛の心があるゆえに陥ることもある。
また、エディのように普段から自分のことばかり、自分が愛をもらうことばかり考えているがゆえに陥ることもある。

その悪から脱する力は、それぞれの人の心の奥にある愛の心であり、善の心。
その力を呼び戻すのは反省であり、許しです。
この映画はそんなことを教えてくれているように思います。

話が長くなりましたので、スターウォーズについては、次のコラムで述べたいと思います。

この記事を書いたプロ

いずみハートクリニック [ホームページ]

精神科医 泉和秀

兵庫県神戸市東灘区岡本2-7-3 ピークス岡本3F [地図]
TEL:078-453-8010

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