コラム

 公開日: 2013-12-05 

民事と刑事の違いについて

宝塚花のみち法律事務所,弁護士の木野です。
今回は、民事事件と刑事事件の違いについて書いてみたいと思います。


民事事件とは、私人間の生活関係に関する事件で民事訴訟の対象となるもののことで、金銭の貸借とか、契約の不履行、交通事故などによる損害賠償などがこれに該当します。


刑事事件とは、刑法の適用によって処罰される事件のことで、窃盗罪、傷害罪、詐欺罪、殺人罪など、刑事罰のあるものについての裁判手続です。いわゆる「犯罪」を処罰する手続がこれに該当します。


民事事件と刑事事件の違いはたくさんあるのですが、大きな違いは手続きの厳格さです。


どう違うかというと、刑事事件の方が圧倒的に手続が厳格です。
どちらも証拠によって判断するのは同じなのですが、使用できる証拠の種類や証拠の使い方が全然違います。


例えば、刑事事件では「伝聞証拠」は原則として使用できません。
「伝聞証拠」とは、伝え聞いた証拠のことですが、Aが「Bから聞いた話だけど、Cが犯行現場にいたのを見たらしいよ。」という場合、Aの話は証拠として使えません。
この場合、Cを見たと言っているBが法廷で証言しなければ証拠になりません。


では、「私はCが犯行現場にいるのを見ました。」というBの供述調書(供述内容を書面にしたもの)は証拠として使えるでしょうか?
原則として使えません。
これも伝聞証拠なのです。


えっ?伝え聞いた話じゃなくて、Bが言っている話でしょ?
と思われるかも知れませんね。


どうして使えないのでしょう?
先ほどの例(Bが法廷で証言)とどこが違うでしょうか?


Bが法廷で証言する場合、裁判官が直接Bの答える様子を観察できます。
また、反対尋問によって、様々な角度から証言をチェックできます(例えば、本当に犯行現場を通ったのか、なぜそんなところへ行ったのか、何を見てCだと判断したのか、顔なのか、服装なのか、乗っていた車なのか、警察官からCの写真を見せられて「この人に似ていませんでしたか?」と聞かれて、「似てるように思います」と答えただけではないのか?等々。)


このようなチェックを受けても動揺しない確実なものなのか、ぐらついてしまうのか、それによって証拠の価値(証明力といいます)が変わってきます。
供述調書ではこのようなチェックをすることができないのです。
だから、供述調書は原則として証拠として利用できない「伝聞証拠」とされているのです。


このように、刑事事件は証拠として利用できるものは厳格に制限されています。
その他にも、刑事事件には色々と厳しいルールがあります。


その背景には、刑事事件では、懲役とか罰金とか、ときには死刑とか、人の重要な権利を奪うことになるため、万が一にも誤りがあってはならないという思想があります。
この思想が「疑わしきは罰せず」という標語に端的に表れています。
しかし、この精神は必ずしも徹底されていないのが現状です。


マスコミは、まるで「疑わしきは犯人だ」と言わんばかりに報道をします(最近はだいぶ配慮するようにはなってきましたが、私にはまだまだ不十分なように感じます)。


一般市民も、「火のないところに煙は立たないだろう」と考えて、「疑わしい」=「犯人」と考えがちです(しかも、一般市民が接することのできる情報は通常マスコミ情報だけです)。


だからこそ、裁判所だけでも、「疑わしきは罰せず」の精神を忘れてはいけません。
先ほど伝聞証拠は「原則として」証拠として利用できないと言いましたが、例外として利用できる場合があります。


この例外を緩く運用するか、厳格に運用するかによって、結論が変わってくる場合があります。


いかにマスコミが書き立てようと世間が騒ごうと、裁判所だけは「疑わしきは罰せず」の精神を忘れないでいてほしいものです。

この記事を書いたプロ

宝塚花のみち法律事務所 [ホームページ]

弁護士 木野達夫

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