コラム

 公開日: 2013-03-11 

時効について

 宝塚花のみち法律事務所弁護士木野達夫です。


 「時効」について


 時効というのは、刑事手続でも民事手続でもあります。刑事手続では、お聞きになったことがあるかと思いますが、例えば、近年の法改正で、殺人の時効が無くなりました(刑事訴訟法250条1項)。強盗や窃盗などでは公訴時効があります。


 今回は、皆様に身近な民事手続の時効について書きます。
 民事手続の時効にも取得時効と消滅時効があります。「取得時効」というのは、一言でいうと、「一定期間、物を占有するとその物の権利を取得できる」というものです。細かい複雑な条件があり、今回は省略します。消滅時効というのは、一言でいうと、「一定期間、権利を行使しないと権利を失う」というものです。取得時効は、ある意味「棚ぼた」みたいな部分がありますが、消滅時効はうっかりしていると権利を失ってしまうので、日常の生活においてはこちらの方が重要だと思います。


 消滅時効の原則は、民法167条に定められています。債権の消滅時効は10年です。債権というのは、例えば、他人にお金を貸した場合に「返してくれ」と請求できる権利です。ですから、他人にお金を貸しても、10年間請求しないと権利を失うおそれがあります。「おそれがある」と書いたのは、厳密には時効の効果が確定的に生じるためには「援用」という法律行為が必要となるからですが、ここでは深入りは避けます。


 債権の消滅時効は原則10年ですが、商行為によって生じた債権の場合は5年です。「商行為」とは、事業として行う行為はほとんど該当すると思って下さい。


 その他、債権の種類によって、「短期消滅時効」というのがあります。例えば、運送代金、宿泊料金、飲食料金などは1年です(民法174条)。商品の売掛債権、学習塾の授業料などは2年です(民法173条)。賃金債権も2年です(労働基準法115条。ただし、退職金は5年)。家賃やマンション管理費は5年です(民法169条)。
 気をつけなければいけないのが不法行為の時効です。不法行為とは、故意や過失で誰かの財産などに損害を与えることをいいます。
 不法行為の時効は2種類あります。一つは、「損害及び加害者を知った時から3年」もう一つは、「不法行為の時から20年」です(民法724条)。いずれか早いほうで時効が成立します。ですから、加害者がはっきりしていて損害の程度が把握できている場合には、3年で損害賠償を請求できなくなるおそれがあります。


 それでは、消滅時効を阻止する方法はないのでしょうか?
 答えは、「あります」です。「時効の中断」と呼ばれるものです(民法147条)。
 おおざっぱに言えば、法的手続を取るか、債務者が債務を負っていることを「承認」した場合に時効は中断します。時効が中断するとは、その時点から再び時効が進行するということです。ですから、時効が「中断」しても、いつまででも請求できるわけではないことに注意が必要です。
 一般的に法的手続は大変ですので、簡便なのが「承認」です。簡便と言っても相手が「承認」してくれなければなりませんが、相手が債務を負っていること自体は争わないが支払いを猶予して欲しいと言っている場合には有効です。
 例えば、家賃を滞納している人が「もう少し待ってくれ」という場合、いわゆる念書を取っておけば、債務の「承認」になります。いつの分の幾らの家賃を滞納しているか等を記載して署名をもらっておけば良いのです。これが債務を「承認」した証拠となります。


 以上のように様々な債権の種類によって消滅時効の期間は細かく決まっています(今回書いたのはあくまで一部に過ぎません)。もし、あなたが何らかの請求権を持っているならば、消滅時効の期間を意識して、しかるべき時期に時効中断の措置を執ることをお勧めします。

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