コラム

 公開日: 2015-12-15  最終更新日: 2016-02-20

実家やシニア世代の片づけは、こうすれば上手くいく!キッチン実例

これから目指すのは、自宅で自活できる片づけ


昨今、実家の片づけに関しての話題は尽きることがありません。親子が「捨てろ」「捨てない」で揉めてしまったり、立派な家がゴミ屋敷化してしまったり。そんなニュースを観るたびに、こうなっては大変と心がざわつき気は焦り、結果、高齢者やその予備軍の多くが自分の最期に向けての身辺整理、いわゆる終活を意識し始めました。

もちろん、自分の終末期に対して整理を始めるのは、悪いことではありません。亡くなってからでは、自分の意思を家族に伝えることはできませんし、身の回りの整理をすることもできません。ですが、それはどんなに言い方を変えても、死に支度なのです。自らが率先して備えるならまだしも、時代の流れに乗って、強引に子供世代が親世代へ終活を促すべきではありません。なぜなら、親の生きる気力を失わせかねない、大きなリスクをはらんでいるからです。

それでは、老いに対して抗わず、ただ黙って年を重ねていけばいいのかといえば、決してそんなことはありません。自分が元気なうちに老いに対して備えることは、必ずやのちの自分の身を守ってくれることになるからです。

どんなに病気知らずの人であっても、人間は加齢に伴い確実に身体機能が衰えていきます。何の問題もなく日常生活が営める年齢を健康寿命年齢といい、平均すると男性が71歳、女性が74歳、それを超える頃になると、何らかの生活上の問題がでてくると言われています。もちろん、その前に病気を患ってしまうと、健康寿命に関係なくもっと早い時期から問題が発生する確率は高くなります。ということは、今まで何も困ることなく暮らせていた家でも、いずれそのままでは暮らしていくのが大変になる可能性が出てくるということなのです。

ですから、たとえ健康寿命を過ぎても病気になっても慌てないために、まずはわが家を自分の力で暮らしていけるように整えておく必要がでてくるのです。つまり、最初から自分の最期を見据えて片づけをするのではなく、自分のこの先の人生のために、将来自分が困らないために、まずは片づけを始めるのです。そのための片づけであれば、子供世代であっても親世代に気兼ねなく勧めることができ、またトラブルになったり気力を失わせたりする心配はないでしょう。なぜならそれは、生きていくための片づけだからです。

これからご紹介する実例も、まさに子供世代が依頼をしてきた親の家の片づけ実例です。高齢者が安全安心に暮らす家を作るには、どのようなことに注意をしながら片づけに取りかかればいいのか、キッチンを例にとって見ていきましょう。

ポイント1 長年の慣習や固定観念に捉われるなかれ!


このお宅は、70代女性のひとり暮らし。昔のタイプのダイニングキッチンには、真ん中に大きなテーブルが置かれ、右に食器棚、左に調理台がありました。


食器は全て右手の食器棚に収められていたので、食事前には食器棚から食器を取り出し左手の調理台へと運び、食後にはその逆の動きを繰り返していました。また、食器はそれぞれを種類別に重ねていたので、ひとつひとつを取り出したり戻したりするのに一苦労。これは、家族がいた頃の名残の行動、あるいは、食器は食器棚にしまうのが当然という固定観念による行動と思われます。

ところが、普段使っている食器は左の写真にあるものだけ。それをいちいち大きなテーブルをはさんだ先までピストン輸送するのは無駄な動作です。そこで、普段使いの食器だけを調理台下の引き出しひとつに収めました。そうすることで、調理台から移動することなく普段の食事をまかなえるようになり、無駄な動作を省くことができました。

人は長年の慣習や固定観念に縛られ、時として無駄な動きに全く気が付かないことがあります。そこを見つけ出すと、驚くほど単純な変更ひとつで、無駄な動作が省かれ家事が飛躍的に楽になることがあります。一度、今までとは違う視点で家の中を見直してみましょう。

ポイント2 キッチンは料理をするのが目的と心得よ!


このお宅には三世代が同居していましたが、多忙な娘さんに代わり、80代のお母さまがキッチンを取り仕切っていました。料理をきちんとするこのお宅では、たくさんの鍋やフライパンを所有しており、それをスライド式の大きな引き出し二つを使って収納していました。


引き出し二つのキャパシティを超えて収納していたため、鍋やフライパンが幾重にも重なり、目当ての器具を取り出すのにかなりの手間と力を要していましたが、どの器具も使っているとのことで、減らすことはできません。ですがよくよく聞けば、その中でも使用頻度に差はあるとのこと。また、その他の引き出しに入っているモノの中には、あまり使っていないモノが多く入れられているようでした。

使っていないモノがキッチン収納を占め、使っているモノが狭い場所にひしめき合っているのは問題です。そこで、使っていないモノを処分や別保管とし、使っている鍋やフライパンを余裕を持たせて収納しました。


キッチンのモノは全てキッチンに収納しなければならないと思うと、どうしてもよく使うモノにしわ寄せが来ます。ですが、キッチンの目的はキッチン用品を収納するためにあるのではなく、料理をするためにあるのです。収納することばかりに目がいって、本来の目的である料理がしづらくなるのでは本末転倒。まずは、日々料理をするために使っているモノを、余裕を持たせて使いやすく収納し、料理が負担なくできるようにしつらえましょう。それが、いつまでも自分の手で料理のできる未来につながります。

ポイント3 危険は今までと違うところあると肝に銘ぜよ!


この写真は、70代女性のひとり暮らし宅。調理台上の高い棚に、モノが所狭しと収納されていました。使うモノもあれば使わないモノもあるとのことでしたが、かなりの高さがあるこの棚は、脚立を使ってでないとモノが取れません。ですが、この女性は今までそうしてきたので、それを特に問題と思っていませんでした。


高齢者が脚立に乗るのも、高いところから大きなモノを下すのも、実は大変危険な行為です。若いうちは重篤な怪我にならない事故も、高齢者は転倒から骨折、そして寝たきりと大きな事故になりかねません。ですから、このお宅のモノもほとんどを下し、残りのモノはお子さんがいらしたときにしか取らないことにしました。



こちらは、食器棚前にモノがズラリと並んでいます。これは高齢者でなくとも危険な状態なのですが、高齢者になると、より足を引っかけ転倒する可能性が大きくなります。それだけではなく、食器棚の中からモノを取り出そうとするときにも、不自然な姿勢を強いられ腰に負担をかけてしまいます。ぎっくり腰の原因にもなりかねません。


上にあるモノに関しては、どうしても上に置かなければならない場合、取らないようにすればかろうじて危険を回避することができますが、下に置いてあるモノに関しては、置いてあるだけで十分危険です。床は収納場所ではありません。必ず取り除くようにしましょう。

これこそが、健康寿命年齢を意識するべきところ。今まで当たり前にできたことが、当たり前でなくなるときがくるのです。いつの間にか身体能力と家の構造がそぐわなくなっていても気づかず、今まで通りに暮らし続けてしまうのです。「今までの当たり前はこれからの危険」と心得て、なるべくなら自分でできるうちに、そのような危険な場所を改善しておきましょう。

終活をするしないにかかわらず、まずはこの先も住み慣れたわが家でずっと暮らしていくために、家の中を安心安全に暮らしやすく整えていくことをお勧めします。

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