コラム

2013-01-06

従業員のうつ病と労務管理

みなさま、こんにちは!

今回は、年頭の「神戸商工だより」に載せて頂いた記事「従業員のうつ病と労務管理」をそのまま再掲させて頂きます。
特に経営者、管理職の方にご参考にして頂けるとうれしいです。

(以下、引用)
1 「守り」の重要性
最近、多くの会社経営者の方とお会いする機会を多く頂き、いつもみなさんのエネルギーに刺激を受けています。経営者のバイタリティーに裏打ちされた製品・サービスの充実等「攻め」の姿勢が、会社発展の原動力であることは間違いありません。
しかし、会社がある程度大きくなりますと、法務・労務等の管理部門、すなわち「守り」の視点も重要になります。なぜなら、「守り」のミスは得てして致命的になりがちだからです。
そこで今回は、法務・労務に関するご相談の中でも最近数が増えている、従業員の「うつ病」を題材に、「守り」の重要性を考えてみたいと思います。
2 従業員の「うつ」発症の法的リスク
たとえば、うつ病を発症して会社を辞めた元従業員から、解雇無効や休業損害、慰謝料などを請求された場合について考えてみましょう。
まずは敗訴リスク。生涯賃金をベースに損害額が算定されれば、賠償額は億単位となることもあります。そこまでいかなくても何百万円か支払って和解ということはザラにあります。また、個人的には、労働審判・裁判の現場では、裁判官が「迷ったら労働者側を勝たせる」という雰囲気があるように感じており、そもそも敗訴リスクの高い事案であると言えるかも知れません。
次に、提訴されること自体もリスクだと考えます。費用や手間暇のリスクのみならず、会社の規模や事件の内容によっては報道に晒されることもないとは言えません。
3 リスクに対応する法的整備
(1)敗訴リスクに対する整備
  ア 労働時間の管理
 従業員さんがうつ病を発症した場合、一番問題になるのが「うつ病の原因が会社の業務か否か」の判断です。
そして、この判断においては、時間外労働時間が重要な要素となります。
紙面の関係で詳細をお伝え出来ませんが、厚労省が発表している「精神障害等の労災認定について」という資料に基準が細かく設定されていますので、是非ご覧下さい。
    具体的な労働時間管理の方法については、後述の「証拠の収集」ともかぶるのですが、みなさんの会社で導入されているように、タイムカード等、客観的な方法で管理するようにして下さい。
  イ 休職制度
    うつ病の事案に限らず、従業員の解雇に際しては、いきなりクビ!は認められず、言わば段階を踏む必要があります(「解雇の相当性」と言われます。)。
    そこで、従業員がうつ病で就業不能になった場合にも、いきなり解雇とするのではなく、一定期間、従業員の労務提供を免除する休職制度を採用することが考えられます。
    これはもちろん会社の義務ではありませんし、また、負担の大きな制度です。
    しかし、休職制度があることによる安心感が従業員の健康回復に寄与し、企業の生産性が向上するという側面もありますので、前向きに検討する価値はあると言えます。
    休職制度は就業規則に規定する必要がありますが、①「私傷病」(業務外の傷病)に限ること②休職期間終了時に治癒が認められない場合、会社は改めて解雇の意思表示をするのか、休職期間満了をもって休職前の労使事前合意による退職になるのかについて明記しておくこと③治癒の判断は会社が行うこと等、全体を通じて会社が判断主体であることを明確にしておくことが重要です。
  ウ 証拠の収集
(ア)話し合いの経緯
     裁判では当事者ではない第三者が判断しますから、証拠が全てです。
そして具体的な証拠方法としては、録音・録画、そして書面ということになります。
ちなみに録音については、こっそり録っても問題ありませんが、堂々と録って頂いて全く差し支えありません。
(イ)指導等の書面化
     書面については、話し合いの経緯を客観的に残すという意味以外にも、上述「解雇の相当性」を満たしていることを形に残す意味もあります。従業員が何か業務上問題を起こした場合に、「警告書」なり「指導書」なりといった書面を交付して受領のサインをもらうようにして下さい。
(2)提訴リスクに対する整備
  ア うつ病をめぐる補償
解雇に直面した従業員にとって一番不安なのは当面の収入がなくなることです。そんな危機感から会社に対する対応も感情的になってしまいがちです。   
従業員に対して、業務外の傷病(私傷病)でも貰える給付がある(たとえば傷病手当)と教えてあげれば、話し合いはスムーズに進み、提訴リスクの減少につながると考えます。
  イ 従業員への対応
訴訟に至る事案には、従業員が会社側の態度に不快感を抱き、感情にまかせて提訴されてしまう場合も多く見られます。
媚びる必要は全くありませんが、会社を辞めるか否かの話をしているときに上司も部下もありませんから、それまでの上下関係を引きずった対応・態度は厳に慎み、余計な提訴リスクを増やさないようにしましょう。
4 最後に
  お読みいただいた皆様の会社が、少しでも「守り」の重要性を意識していただき、益々ご発展されることを心よりお祈り申し上げます。
(以上)

この記事を書いたプロ

平野・佐々木法律事務所 [ホームページ]

弁護士 佐々木伸

兵庫県神戸市中央区多聞通2-5-16 三江ビル2階 [地図]
TEL:078-351-7687

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